零回戦の正解は「吊り革」。
節分の前日だったので、一回戦は「豆」に。
一回戦 「豆」の字
(★=特選)
赤飯を食べたばかりで小豆色/小佐治
「どこが小豆色ってのか、これだとわかんないなあ」「パンツの中じゃないですかね(笑)。どういう意味だろうなあ」「生理が来たから赤飯炊くんだろう? 赤飯炊いたから生理が来てる。関係が逆になってる」「よくわかんないな、なにが小豆色なのかですよね」「もうちょっと言ってくれないかな」
庭の木で豆まきを待つ鳥ひとつ/夢の二
「鳥ひとつ、わかんないな」「ひとつって言わなくていいだろう。あんまり効いてないなひとつって言い方」「どういう意味だろう」「そのままだろうな、こぼれた豆食べに来るんだろう」「鳥ひとつ、って言い方変じゃないですか。一羽って普通言うじゃないですか」「ロボットみたいな感じなのかな」「ロボットの鳥もわかんないけど」「鳥、じゃなくて具体的な名前がいいと思いますね。ムクドリは豆食うか知らないけど」「口ひとつ、って言うと鳥が出てくるよね。くちばしだけが巣から見えてる感じ。嘴って書いてはしって読ませる。なんかひとつだったら部位にすれば」「口って言うと動物全般を言っちゃうから、嘴の字を書けば鳥に限定されますね。漢字の面白いとこですね」「鳥ひとつ、って焼き鳥っぽいよな」「焼き鳥一丁な感じですね」
福豆の数のノルマがほぼ限界/ときこ
(笑)「シルバー川柳だろこれは」「見たことある気がする。ザ・見本みたいなヤツだよシルバー川柳の」「福豆の孫にノルマを言われをり、とかそれくらいだったら言い方わかりますけどね。シルバー川柳ですねこのままだと」「100万人が考えたことあるよ(笑)」「60歳で120とかもっとぶっ飛んだこと言えばいいのにな。言ってることはわかります。実際けっこうお腹にたまるんだよね」
トーストに納豆のせる給料日/たろりずむ
「うーん」「愛の日とか、これこそ変な日にしたほうがいいな。給料日、合ってないよな。交番の日とか面白いかも」「牛丼に玉を乗せたる給料日(咲良あぽろ)くらいだったらいいんですよ。トーストに納豆を乗せるだと、そもそもうれしさもわかんないし。もちろんこの人にとっては爪に火を灯す思いをして生活してきて、今日は給料日だから納豆1パック30円乗っけてやろうってのはわかるんだけど、で大げさ過ぎるって感じはしますね」「昔ちょっと流行ったんだよね納豆トーストって。意外と合う」「穀物だからなんでも合うか」
定食の杏仁豆腐花衣/遊鬼
「もうちょっとなんか言ってほしいな。杏仁豆腐がうれしいのかうれしくないのか。これだとうれしくない感じなのかな。それが邪魔なのか来てよかったのかがわかるといい。これだと判断できないな」
厄払い豆乳鍋が沸騰す/夢の二
「厄払いは正月じゃなくて2月、立春の前にやるヤツだっけ?」「晩冬の季語でありました。なんで晩冬なんだろう」「春を迎える前にけがれを落とすってことかな。新年だからね春っていうのは。豆乳鍋沸騰させると豆腐ができちゃうからな、豆乳鍋は沸騰させないほうがいい」「にがり入れないとダメじゃないですか?」「あ、湯葉ができるのか」
冬虹の消へて豆の木から落ちる/ときこ
※歴史的仮名遣いでは「消ゆ」なので正しくは「消えて」
「面白いけどね。でも冬虹に乗っかるイメージはないからな、これだと。完全に童話の世界で面白いんだけど、虹と豆の木と因果関係がないからな。わかんなくはないけどねシーンとしては。惜しいんじゃないかな。これ、因果関係が変にありそうなのがいけないんだよね。これだと虹の上に乗ってるような感じもしちゃうのが、逆に因果関係で読みたくなっちゃうところが弱点なのかな」
納豆を混ぜてる横顔が般若/ときこ
「あー」「ラッパーでいますよね般若」「DJ般若」「これは能面の般若のこと言ってるんでしょう」「能面って横顔のイメージないからな」「でも能面ってのは上下左右から見たときにちゃんと表情が変わるようにできてるんで、般若の横顔はわかりますよ。でもちょっと大げさ過ぎるかな」
★小豆洗ひの腰の低さや雪解水/翼
「小豆洗いは妖怪ですね。小豆を洗いに来るんでしたっけ。小豆を洗うだけの妖怪」「別に普通のおじいさんだ」「特に人間に悪さをするわけじゃないんですね。小豆洗いが、あ、ちょっとお勝手使わせていただきますんで、ってなんか腰が低いんですね。雪解水が面白いかもしれない。人間関係がアイスブレイクしていく、溶けてあったかくなっていくその春の感じと、小豆洗いの腰の低さ、ちょっと面白いと思いますね」「かなりトリッキーな句」
春炬燵豆本で読む西遊記/遊鬼
「豆本と西遊記はいいんじゃないかな。意外といいテイストかな」「豆本って確か10cmくらいのが昔ありましたね」「豆本作りが趣味の人もいるし。ミニチュアだから読めなくてもいいんだ。今もあるよ。春ゴタツ、が逃げた感じするけどね。西遊記は割と豆本としていい気がするな、いい組み合わせ」
春隣豆知識好きの転校生/夢の二
「あー」「転校生、いきなりそこまでわかるかな」「逆のほうがいいかな。転校生の豆知識、って言うと。そうすると春隣、が面白くないんだけど。転校生、に確かに季感はないんだけど、春っぽいかなって気はしますけどねなんとなく」「春隣、要らないかも。転校生自体がもう春の感じ」「現代の感じだと、例えば銀行員の子どもとかだと10月か4月に転校させられちゃう、そんな感じがありますね」
口角に杏仁豆腐春近し/企鵝
「明るいですね。口角、口の端っこって意味だと思いますこの場合は」「口中、でいいんじゃないの。口角、にする意味がないんじゃないか。口角だとこぼしちゃっているイメージになっちゃうからね」「乱雑に、やんちゃに食べたって感じは出ると思いますよ。杏仁豆腐って破片が出るじゃないですか。汁の最後のほうに杏仁豆腐の1mmくらいの破片ができて、それが口角に残った、つまり急いで一生懸命に食べた。例えば子どもの口の横だったら可愛いと思います、杏仁豆腐が口の端っこについていた。ただ春近し、がやっぱり」「杏仁豆腐、春のイメージが強いかな」
メイドカフェお口にあーんと小豆粥/みずな
(笑)「鶴太郎だよそれ」「小豆がゆは渋いだろ、ないだろそんなの。「いいメニューだよね。おばあさんのお給仕さん出てくるよ」
※片岡鶴太郎が老齢の女優・浦辺粂子(うらべくめこ)の物真似をしながら熱々のものを食べさせる&食べるというネタが1980年代にありました。
★さつちやんが年の数より食べたがる/翼
「さつちやん、って意外といいかもしれないな。さっちゃんはね♪って歌もあるくらい、さっちゃんっていうのが幸子さんていう名前のニックネームであることもわかる」「スムーズな感じでスッと入ってくる」「さっちゃんっていうのがいわゆる一人の少女って感じがするんですよ。これはさらちゃんであることを除いてもいい句だと思いますね」「川柳を極限までよくするとここまで来るって感じがするけど」「女の子の背伸びしたい感じとかね」「私18個食べたから抱いてとか(笑)そういう冗談を言ってる」「違うよ、コンプライアンスうるさいんだから。1杯飲ませてとかまだそっちのほうが」「小林幸子でもいいですけどね、小林幸子が出てきて。小林幸子の元気さが逆に出ますよね」「サッチー(野村沙知代)でもいいよね」「イメージ出てくるね、音で」「さっちゃんっていう時代を超えた名前、いいかもしれないですね」
子兎は豆科豆類転び行く/遊鬼
「よくわかんない」「滅ぶじゃなくて?」「転ぶ、です」「子ウサギのウンコの話じゃない?」「子ウサギのウンコが豆だって言ってるんですか? だとしたら全然面白くないけどな。違うでしょたぶん」「まろぶ、じゃない?」「まろぶって読むんですか?」「転がってく意味でまろぶじゃない? 小ウサギが豆みたいに小っちゃいからコロコロしてるねってことじゃない? まああんまり大した句じゃないけど」
鬼やらひコーヒー豆も撒かれけり/遊鬼
「シンプルですね」「ブラジルのビーンズスロー。でもやっぱ大豆に霊験があるって話だからな」「ブラジルの鬼やらい。夏ですか今は」
愛の日を勝つ国産のカカオ豆/みずな
「なんで勝つ、なのかわかんない。『愛は勝つ』KAN」「凝った材料でバレンタインのチョコレート作ったんじゃない?」「愛の日を勝つ、だからバレンタインの戦争に勝つって意味だ。例えばクラスでイケメンの男子がいて、競争倍率10倍20倍って中で私は国産のカカオで作ったチョコレートで彼の心をゲットする、そういう句じゃないかな」「あんまりうれしくないな国産のカカオ(笑)。普通のでいいな」「明治とかロッテのヤツを原料にしたヤツで十分なんですけど」
※東京都・小笠原諸島で国産のカカオ豆が栽培されているそうです。東京カカオプロジェクト
豆でもなくスイッチでもなく乳首です/翼
(笑)
小豆大の物を弄って寒の入り/小佐治
(笑)「遠回しだな言い方が。おっさん臭いね。どういうこと?」「チンポコが小さいって言ってるんだと思います」「クリトリスじゃないの?」「クリトリスでもいいですけどね。お豆ちゃんって言い方しますからね」「小豆大の物って言い方がおっさん臭い」「物、っていうのが下ネタの響きがあるじゃないですか。それからいじるっていうのはもちろん触るとかなめるとかそういった意味だと思うんですけど」「全然わかんない」「クリトリスを言ってるのか自分の縮こまったポコチンを言ってるのかわかんないですけど」「チンポコで豆は無理じゃないか。小さ過ぎるだろ」「寒の入り、が面白くないと思いますよそうすると」「全然意味ないと思う」「クリトリスが小豆大だと相当立派だよな逆にな」
★福豆で説明したるオフサイド/たろりずむ
(笑)「ああ」「けっこう戦略家な感じがする」「裏切られましたね。まずオフサイドの説明をすると、サッカーのルールの一つでゴール前にポーンてパス出しちゃいけない、正確に言うとキーパーと1対1になるようなパスを出しちゃいけないんですけど、すごい細かいルールがいっぱいあってそもそも理解が難しいんですよ」「シュート体勢に入ってなきゃいい、みたいな」「例外がメチャクチャいっぱいあるんです。そういう難しいオフサイドのルールを、福豆を机の上に置いて、これがディフェンスこれがキーパーねって、ボールをほらここにパーンてやるとオフサイドになるんだよって説明したって意味だと思います」「面白いんじゃないか。なかなか福豆のオフサイドって確かにやれなくもないよね。ちょっと新しい句」「最初笑ったけどよくよく考えるといい句ですね」「誰に説明してるかってのもあるね。ちょっと女の子に」「子どもでもいい。親子で、食卓でご飯食べてるときにテーブルで」「微笑ましいね」「かなり可愛い句だと思う」「読み直したら明るくていいな」「新しいよね句題としても」
手のひらで豆腐切り込み春温し/龍
「水温む、にしてほしかったな。春温し、はぬる過ぎるな。豆腐は冷たいからね」「水温む、だと当たり前すぎませんか?」「当たり前すぎるけどね。春温し、はゆるいな。切り込む、っていうのはもっと細工するときだから、切りたる、でいいと思う。切り込むはやり過ぎ」
白梅や甘納豆屋が廃業す/遊鬼
「惜しい! まずはいいんだけど、でも惜しいと思うんですよ」「や、がきついかな」「白梅や、の切れがきつくて、後の甘納豆屋の屋が音として引っかかっちゃう。その気持ち悪さが残るので、やっぱり上五は5音のものポンて置くか」「梅もいいんだけどね」「梅、いいと思いますね。白梅の切なさと甘納豆屋の廃業するっている寂しさ」「合ってるよね」「合ってるんだけど音だけが残念ですね。なんだったらいいんだろう」「もう、梅白し、くらいでいいと思うけどね」「梅咲いて、だとダメなんですよ。白い梅が寂しさを出してると思うんですよね。紅いとやっぱりめでたくなっちゃうから。梅が白いってこと言って、ああそういえば上野に合ったあの甘納豆屋なくなってんじゃんって」「和菓子の感じが出てる」「甘納豆屋なんてどんどん廃業してるでしょうからね」「湯島とかの感じするよね」「時間の経過と季節感と」「高校3年生受験生の時、湯島に行って食べた甘納豆屋がつぶれてたと」「階段降りた辺りにありそうな気がするよね」「大学生の時に行ったラブホ街がここだったなとか思いながら、あ、甘納豆屋がなくなってるっていう風に」「樋口一葉が寄った店とかあの辺ありそう。話がふくらむよね。素材は素晴らしいと思う。廃業、はきついかな言葉として」
豆乳を使つてしまふ闇夜汁/企鵝
「使ってもいいんじゃない(笑)」「でもわかるんですよ。闇鍋は大きく味を変えるもの入れちゃダメですね、特に調味料は。ベースはやっぱり1個のもので、具をなんか足すべきなんですよね。せっかくキムチ鍋にしたのに豆乳とか入れられたらもうその時点で台無しなので」「いや全然合うよ。豆乳はまろやかになるだけで、基本的に味は壊れない」「味を大きく変える方向のものはダメだと思いますね。で、これが俳句としていいかって言うと、まあ普通ですね」「闇鍋の句は相当難しいよ。闇鍋自体が面白いからね、それをいかに抑えて詠むか」「絶望的に面白くない闇夜鍋、くらいでいいかもしれない。上司と部下にはさまれてとか」「利根川と突ついてゐたる闇夜鍋」「嫌ですね、中間管理職」「金持ちがスコープ着けて見てる」
抽斗に去年の豆と知らぬ金/翼
「組み合わせは面白いか。知らぬ金、いいですねあっさりとしてて」「自民党員です(笑)」「知らぬ金、は怖いな。ホログラムのない昔の一万円札とか聖徳太子のとかだったら余計怖いな。流石にそれはやり過ぎだとしても、やっぱり知らない金って怖いじゃないですか、遣っていいのか遣っちゃいけないのかもわからないっていちばん怖いんですよね」「遣ってないから裏金じゃない」(笑)「ニセ札かもしれないしヤクザの金だったら殺されるし」「でも自分の家の話でしょ。だったらただ忘れたんじゃないかって風に」「だとしたらいいんですけど、知らぬ金、って言い方が怖いですね。ただ去年の豆、はちょっとあざとい気もしますけどね」「自民党のイメージで作ったんだけどね、引き出しに1000万入ってたみたいな」「なるほど時事句か」「でもいろんな取り方できるからこれだと」
着膨れや豆乳で作るカップ麺/遊鬼
「昔、牛乳で作るカップヌードルが」「味噌が美味いんだよね」「最初はネタだったらしいんですけど、実際にやってみたら美味しいってことで商品化した例がありましたね。この豆乳はどうなんだろう。アンチエイジングとか美容とかを考えてるけど、カップ麺を豆乳で食べてるんですかね。そうすると着膨れ、があんまり効いてない気がするな」「カップ麺って外で食べない、豆乳入れちゃうと家で食べてる感じがね」「むしろ料理にチャレンジするとかそういう意味かなと思った。着膨れっていうのは服いっぱい着て外出て、やせてるのに太って見える、そういう意味ですよね」「家が寒いのかな」「それなら着膨れ、じゃなくて隙間風、とか別の言い方があるじゃないですか。着膨れや、って言ってるからこの人はやっぱ体型を気にしてるんだと思いますよ。美容目的とかなのかな」
湯豆腐に掌を当てて待つ上司かな/翼
「自分の直属の上司が湯豆腐に手を当てて待つ」「なにを待ってるの?」「湯豆腐ができあがるのを待ってるとしたら、火傷するからやっぱおかしいんだよ。どこに手を当ててるのか悩みますね。湯豆腐自体には直接触らないから、湯豆腐を温めてる鍋か、鍋のふたなのか、あるいは湯豆腐の入ったお椀。でも食べますよね、お椀に入ってたら。そうすると何を待ってるのかわかんない。湯豆腐ができあがるのを待ってるのか」「上司を待ってるんじゃないですか?」「上司が自分の席の隣とか真正面とかに来るのを待っている、自分が待っている」「単に上司がその会になかなか来ないって話じゃなくて?」「そういうこと」「例えば7時に料亭取っといたのに」「ああ、そうすると合点がいくな」「7時半くらいになってもなかなか来なくて、湯豆腐を出しますねって女将さんが作ってくれちゃって」「幹事の人がちょっと焦ってる感じかな」「ちょっと寒いなって思いながら湯豆腐に手を当てて上司を…。ていうか、社長とかもっとやっちゃっていいんじゃないですか。上司って普通の課長レベルに聞こえちゃいますけどねこの感じだと」「昔の造りの店だと冷えるんだよな隙間風がね」
商品券狙う豆撒き地を這つて/みずな
「豆撒き、で一旦切るんだよ」「どういうことですか?」「いっぱい成田山とかまくじゃん、あれを取ろうと」「成田山でお相撲さんがやってる豆まきのこと言ってるのか」「あれ中に景品とか入ってるから。それでみんな股の間をくぐってって投げてる所に近づいてったって(笑)」「アニメとかでそういう描写ありますけどね、実際やった人見たことないですけど。野次馬かき分けて股の下から来る坊主」「地を這って、って大げさだよな」
豆撒きの力士の先にホームレス/小佐治
「今の句と同じじゃないですか(笑)。成田山とかで豆まいてる力士のとこにホームレスが溜まってきたと。東京から来たんですって。先に、がどうなんでしょうかね」「対比かもしれないよね、場所の」「そういうことだね、奥行きの」「いいすね」
豆腐屋に嫁いでゆきし花水木/翼
「花水木ちょっと早いな」「美人の例えでいいかなこの場合の花水木は。美しい花水木みたいな、沖縄みたいな顔してたな、そういう勝手なイメージなんですけどね。花水木みたいな美しい女性が、クラスで2番目に可愛かった女の子が豆腐屋に嫁いでいった、そういうイメージでしょうか」「色が白くて食いつきたいが歯が立たない。豆腐屋の娘は水臭い(笑)」
豆粒の如きデモ隊知事室より/小佐治
「知事室があんまり面白くないかな。割と悪くない。沖縄とかのイメージにしたらいいのにね、辺野古より、みたいな」「難しいな」「なんのデモかわかるようにしたらいいんじゃないの」「人が豆粒のように見えるってたぶん上から目線で言ったんだと思うけど、逆に読めて、1万人集まっちゃったと。300人のはずだったけど1万人集まっちゃって人が豆粒のように、想像以上の大きなデモに発展してしまったっていうのを豆粒って言って、逆に悲壮感が漂ってる感じじゃないかと思いましたね」「「どっちかって言うと東京じゃないイメージで、デモやってるんだけど人がポツポツだから豆粒みたいなイメージしたけどな」「普通はそういう意味だね。地方の名前入れたほうがいいと思うなあ。足尾、銅山より、みたいな感じで。水俣より、とか」「デモ隊ってのも微妙なとこですね。左翼的だと思うんですよデモをやる人たちって」「僕この間沖縄行って作っていちばんよかったのは、ガジュマルの穴よりデモの溢れ出す。これだと沖縄ってわかるじゃん」「ガジュマルって普遍的な印象もあるしね。それと今の、いろいろあるっていう対比がいいよね」
豆板醤入れ過ぎてゐる褞袍かな/遊鬼
「どてらは冬の季語」「どてら、合わないかなあ。辛いもの好きな人って暑がりのイメージだからな、薄着のほうがいい気がするな」「キッチンでどてらを着て暖房節約してるわけですよ。その人が豆板醤をあ、入れ過ぎちゃったって言うんだけど、でもおっちょこちょいじゃない気がするんですよ。どてら着てるってむしろ几帳面な感じがして、几帳面だから暖房なんか消してどてら着れば電気代かからないじゃないって、そういう人が豆板醤入れ過ぎることないと思うんだよな。そこはリアリティあんまり感じなくて、むしろ豆板醤をわずかに隠し味程度に入れるくらいの器用さがあったらいいと思いますね。豆板醤小さじ、でもない1つまみ」「入れ過ぎだったらやっぱりどてらが合ってない」「Tシャツのほうがいいですね。いや上裸ですよ。豆板醤入れ過ぎてゐる上裸かな、だと夏の句なんですけど、そうすると翼さんがキッチンに立ってる感じになるじゃないですか」(笑)「そうなんですよ。どてらって言うと逆に寒さに弱い人が豆板醤入れ過ぎちゃったって句になるから」「矛盾というかかぶりがあるみたいな」「豆板醤摑んで入れる上裸かな、とか言うと翼さんみたいな感じが出る」
豆が目に入つた鬼が病院に/翼
「子どもが投げたのが鬼役の人にね。つらいよね」「面から目だけ出てるじゃん」「わかりやすいですね。病院、が面白いのか、救急外来のほうがいいのか。そこまでやんなくて普通に町医者でいいのかな。ただ、夜投げるじゃないですか豆まきって。夜だと町医者開いてないじゃないですか。そこら辺考えると病院、って言ってるのが総合病院とか県立病院とか」(笑)「鬼の格好のまま行ったりしてな」「もしかしたら救急だったかもしれない」「そうすると面白いですね。救急で失明の恐れありって言って、眼科の専門医がいないから困っちゃった」「救急車、にしちゃおうか病院じゃなくて。豆が目に入つた鬼が救急車」(笑)「いいですねそっちのほうが」
二回戦は、2月2日がツインテールの日だということで。
二回戦 「つい」の音
(★=特選)
サッチーとサウナを対で冴返る/惟久里
「サッチーさんと一緒にサウナ行ったって話」「野村沙知代じゃないかと思うな」「サッチャーのほうがいいと思うな」「サッチャー、鉄の女か。サッチャーとサウナ対で行かないと思いますけどね」「でも女の人の政治家ってエロス感じるんだけどね」「特に白人の女性、メルケルなんかも、可愛らしいんですよ年取っても」「サッチーとサウナを対で、無理があるんじゃないかなこれは」「サッチーが突然で、まったくわからない。厚化粧のイメージだな」「惟久里さんから。昔クライアントさんのスポーツジムが同じで、お付きで行った私も入らせていただいたらたまたま2人きりに。野村さんのほうですって。実体験でした。だから冴返る、ってビビっちゃったってことか。季語としてじゃなくてハッとしたって意味ね」
★駅を出た後は晴着についていく/たろりずむ
「ああ」「いいね」「成人式だね。場所を調べないまままあこっちだろうって。これはいいんじゃないあっさりしてるけど」「一発で素晴らしいと思います」「知らないプロレス会場とかね」「いやたぶん晴れ着って言ってるから成人式とか。お葬式ってことないんだよね。成人式とかなにも言わない、このあっさりした感じは」「さっきのさっちゃんの豆の句と同じ爽やかさを感じる」「非常に爽やかで重くないんですよね。飄々とした感じが美しい。見事」
移り行くあの焼藷屋追尾せよ/みずな
(笑)「追尾、はやり過ぎ」「買い物でいいじゃん普通に」「追尾って追いかけ回す意味」「子どもがおまけ目当てに後ろを」「確かに小学生目線で追尾せよ、はわかる。スカウターのおもちゃみたいの着けてあそこだ!3丁目の角って言って」「戦闘力弱いぞ」「行け!はさみ撃ちだ!って」「最後乗っ取っちゃえ」「そういう感じはわかりますけどね」「移り行く、要らな過ぎるよ。焼芋屋に移り行くって遣ったの初めて聞いたぞ」「すごい大げさだな」「焼芋屋追尾、は面白いと思いますよ。ただ、そこで止めてよかった気がする意味としては。後は夕焼けとか適当に言っとけばよかったのに」
遠足の補助椅子に軽き殺意かな/遊鬼
「バスの中のね」「入り切れなかった感じ。でも先生とか座るよね」「軽き殺意、が硬いっすよね」「軽くないよ。殺意って俳句ではやっぱ難しいですね」「軽やかさとか大事なんだ」「補助席にどう座ったらカッコいいかとか、どう座ったら最高にダサいかとか、そこら辺攻めてもらいたいですね」「痔に響くとか。それはやり過ぎか」「ウケになっちゃうんですよ。ウケるんじゃなくて切なさとか強がりとか、そういうの詠んでほしいですね」「ちょっとペーソスをね」「補助椅子で俺はクラスの中央だ、くらい言っとくといじめられそう感出るじゃないですか」
血のついたAEDや冬の月/企鵝
「怖いですね。急に情景が怖くなりましたね」「寒々としてる」「やり過ぎと取るのかリアルと取るのか難しいな。これリアルだなと仮に感じるとしたら」「血を止めるほうが先だからな。出血してて心臓止まってる人ってあんまり見たことないよ」「例えば出血自体はすり傷だけど瓦礫の下敷きになって心臓が痙攣してる」「心房細動」「除細動器って言うらしいです。細動を止める機械らしいです電気を流して。心臓マッサージやるわけですね、大丈夫ですか救急車来るまで頑張ってくださいって。そこで血が付いてるってわけだから災害とかだと思うんですよ車に轢かれたとか。実際AED打つ瞬間って適用症かどうかをちゃんと言ってくれるらしいですよ。あ、この人は必要ないですって。だからAEDを出してるってことは本当に命の危機だってことまではわかります。冬の月、を持ってきたのが冷めた感じを出し過ぎちゃって、この対比にあざとさを感じるんですよ」「急にちょっとドキュメンタリーぽくなる」「冬の月、だったら鍵の開いたAEDや冬の月、くらい言っとくといいんじゃないですかね、すごい怖い感じがあって。血のついた、はやっぱりやり過ぎな感じはしますけどね。これリアルな現場の話なんでしょうねおそらく」
追伸にもう死にますと日を浴びる/イチ
「日を浴びる、が意味わかんないな。わかるけどわかんないなあ」「と、が微妙なところで」「自分が読んで手紙に日が当たってるほうが面白いと思うんだけどね。でも日を浴びる、はちょっと雑かな」「追伸が自分に送られてきたのか自分が送ったのかによるんですけど、送られてきたほうだと思ったんですよ最初」「と、ってことはそっちのほうだよね」「それを読んで、あ、もう死にます? はいはいメンヘラうるせえなって思ってポンって携帯投げて自分で窓開けたってことだと思ったんですよ」「季語替えたらいいのかな」「替えたらいい気もしますよね。花見行く、くらいでよかったんじゃないですか。今度は逆に自分が追伸したほうになるんですけど。もう死にますって女に送っといて」「あなたがって書いてあった、裏めくったら」(笑)「春祭り、とかでもいいって言えばいいけどね」「これは自分が書いたほうなんですよ」「と、って言うと読んだほうになる」「てことは、と、はどうすれば?」「死にますと書いて送る、とか言い方を変えたり。なにするかにもよる。例えば、送って上野公園に、とか言うとそれだけで花見の句になるじゃないですか。でも公園だと死んじゃうか、不忍池で自殺する可能性もあるから。まあやり方いろいろあると思います」「ほのめかす、いいかもしれない逆に。追伸で死をほのめかす、って言うと自分の感じになって、もう最近つらいんだよねみたいな」「でもそうすると最後、裏切りなく本当に死ぬことになっちゃいますよ」「逆にリアルになるかなと」「でもリアルだったら最後お花の名前とか持ってきてもいいかも、ヒヤシンスじゃつまんないんだけど春くらいのお花」「シネラリア(笑)」
豆撒きで殺意芽生える小学校/小佐治
「また殺意、ね」「小学校のくくりが面白くて。雑さが逆になんか面白い。小学校全体が殺意が芽生えましたみたいな感じがするけど。どんな小学校なんだ(笑)」「競争意識を植えつけられてる」「難しいな。小学校、はやり過ぎだな。例えば豆まきが原因で本当に殺人事件を起こしちゃってっていうストーリーを仮に考えるなら、豆撒きの殺意を話す取り調べ、くらい言うと捕まった後の句になるじゃないですか。原因はなんですか、実は私小学校の時いじめられて豆まきで目に豆を入れられたんですとか。この句だと担任の感じが出ちゃうんですよ」「生徒が怒ってるのか、まあ先生だろうな」「先生がこのガキが!今投げたの誰!って言って、みんなシーンとしてるの。授業中に豆まいて先生ぶち切れる。先生、録音してました~って(笑)」「いいクラスじゃねえか」(笑)
寄居虫がついでに買つてゐる家だ/小川
「面白くし過ぎちゃったかな」「ヤドカリと家の話を交ぜちゃうとしゃれに寄っちゃうんですよね。「借りている、くらいだったら面白いね。寄居虫がついでに借りてゐる庭だ、くらいならちょっとズレてる。この句だとそのまま」
少年の乳首をついばむ渡り漁夫/遊鬼
(笑)「漁夫は漁師。ニシン漁の人が冬になると渡り漁夫って言って北に行く」「を、なくしたほうがいい気がするんだけどな音としては、わざわざ字余りにしなくても」
三寒四温Twitterが死語になる/夢の二
「三寒四温は頑張った感じがするな」「すごいってわけじゃないんだけど、2024年の三寒四温にしか遣えない、一生に今しか作れない句だと思うんだよツイッターが死語になるっていうことを言えるのは。面白いですね。5年10年遣う人は抗ってわざとツイートとかリツイートって言い続けると思うんですよ」「戻す可能性もあるもんね」「リポストってなんか慣れないんですよ」
内閣が失墜したる復興策/小佐治
「失墜、と復興、の感じがなんか面白いけど」「ポエムがないな」「なんて言ったらいいんだろう」「失墜を待つ、くらいが。政府が代わるのがいちばんの策だ」「ザ・社会詠って感じ」
脱衣所のごついペニスの渡り漁夫/遊鬼
(爆笑)「ここまで突き抜けるといいんだよ逆に。突き抜け大事だね」「ごつい、がいい。手触りがあるよ(笑)」「言葉の選び方素晴らしいですね。なにがいいってやっぱ、ご、で始まるガッていう感じ」「ペニス、いいよね」「半濁音が急に来る、口に出してみるとメチャクチャいいよね」「相当強そうだよ」「漁師のイメージでね」「チンポ、じゃダメだもんね」「チンポじゃこの句がギャグになっちゃうんだけど、ごついペニスの、ってなんかカッコつけてる感じがするし、一応医学用語だし」
狛犬の対も同じく雪積もる/夢の二
「ああ」「わかんないな、狛犬が対なの当たり前だし」「同じく、がくどいなあ」「やっぱ逆じゃない。狛犬の左側だけ雪積もる、とかそれくらい馬鹿じゃないと句にならないんで。対も同じく、の言い方が」「ちょっとあざとい」「阿のほうだけとか」「つい、って言葉入れなきゃいけなかったんだけど」「対、が効いてないね」
ツイ廃と自称している布団かな/龍
「ツイ廃と? ツイ廃を、じゃないかな」「自傷?」「「自称のほう。ツイ廃を、にするとリストカットとかの自傷にもなるかもしれない。でも自傷のほうだと面白くないから。自称ツイ廃のほうが面白いかな」「わかりやすいよ。全部言っちゃってるからこれ以上なにもないな」「基本的な考え方として、例えばさっき出てきた殺意という言葉とか、凄惨と言えば大げさだけれどもそういうのは俳句としてあんまりよろしくないってのはあるんですか?」「逆にそういう強いのを活かした句もあるからね、鮟鱇の骨まで凍ててぶちきらる/加藤楸邨とか。それは強い言葉の面白さがあるんだけど。さっきの殺意、は浮いちゃってるのかな、そこにもたれちゃってるのかな内容が。全体としてトーンがあってればいいんだけど。豆まきに対して殺意ってやっぱり強過ぎるんだよ内容としてね」「乖離してるってことね」「逆だったら面白いんですよ。マタギの目に殺意がないって句だったら面白いと思うんですよね。殺意があるって言っちゃったら面白くなくて」
北颪ついに豆腐ともやしだけ/惟久里
(笑)「北おろしって?」「冬季に山や丘から吹き降ろして来る北風のこと。ついに豆腐ともやしだけ、はやり過ぎなんじゃないかな。貧乏で飯を食う金がないわけだけど、ちょっと無理じゃないか?」「つひに、じゃなくて例えば今日は、とかどう?」「面白いかも。あと季語をもっと明るくするか。これだと侘し過ぎるんで、逆にもっと明るい、春一番、とか」「逆に、ついに豆腐にもやし足す、って言うとラップした感じが出て面白い(笑)。この句は貧乏になってって金がなくなって食い物がなくなってって、ただそれだけになっちゃうんですよね」
よく喋る佐保姫なのでツイキャスに/ときこ
「佐保姫って?」「春の神様。龍田姫が秋で」「これだとネタだよね、よく喋るからストリーミング放送に出したっていう」
つひつひくしやみドミノ完成目前の/翼
「ああ」「そのまんまだな、ギャグ過ぎるだろうな。でもこういうの絶対いるんだよ、大学生100人くらいいるとわざとくしゃみするヤツとか、ふざけて花にこより差すヤツとか。ついつい、ってのがどうなんだろうな。それこそ逆のほうがいいんじゃないですか、鼓膜破れる、とか耳鼻科行く、とかのほうが面白いんじゃないかな」
龍天に登る巨人の追随す/ときこ
「巨人?」「ドラゴンズと巨人じゃない?」「でもドラゴンズ負けてるし。監督がいなくなったって意味で龍天に昇る、ですか?」「巨人って虚人のほう?」「ジャイアントのほうです」「虚ろのほうが面白いかもな」「ドラゴンズ今勝ってないから。落合監督の頃だったらわかるけど」「神話とかの巨人のほうかな。でも巨人はあんまり追わないかな」「龍天に昇る、って実際にはないことじゃないといけないと思う」「中国の伝説だからな元々。巨人も中国神話であまり出てこない気がする」
にんにくとあだ名が付いたバスツアー/たろりずむ
(笑)「いいっすね」「朝元気つけるためにお母さんに餃子食べさせられて、おめえ息臭えよとか言われちゃってニンニクってあだ名がついたと」「バスツアー自体がニンニクなのかと思った。読みとしてはそっちのほうがそれっぽい」「寺に行けなくなってね、山門にいるわとか」
落第やすつぽかしたる追試験/みずな
「ダメじゃん」「ただ2留するだけじゃん」「順接じゃねえか」「順接っていうのは?」「落第っていうのは留年のことですね。追試験っていうのはそもそも進級しようとしてでも赤点取っちゃって教授に頼み込んで無理矢理受けさせてもらうとか、あるいは不慮の事故で試験が受けられなかった場合の救済措置なんです。すつぽかしたる追試験、っていうのは進級する気がない」「順接は当たり前のこと。逆接って逆じゃん。普通だったら追試を受けなきゃいけないのに受けなかった。同じ内容だねってこと」「○○だから、でつなぐのは順接で、しかし、とかだと逆接です。今回の句だと落第はただ留年すること、すっぽかす追試験っていうのがやっぱり落第することなんで、なんも意味がないんですよね。これ探梅、とかだったら面白い。探梅やすつぽかしたる追試験、って言うと」「探梅って」「梅を探しに出かけることです。風流というか気取った学生ですね。もう大学の授業なんてどうでもいいよって、ちょっと上野公園で梅でも見てやろうって行っちゃうような抜けたというか気取ったヤツ」
肛門に紙がついてた雪女/たろりずむ
(笑)「雪女の神秘性をわざと崩そうとしてるのはわかる。肛門に紙がついてた、って言うと雪女の肛門見たわけだから、雪女のイメージが大きく変わりますね」「いいシチュエーションだな」「下半身なかったって話だからな俺の頃は」「助けたんだよね。助けていい具合になって見ちゃったっていう」「限定的過ぎるのかな」「それ以上取れねえな。どこに紙がついててもダメだと思う。人間性出しちゃどうかっていうのはあるんだよ雪女っていうのは。前に翼さんのNHKのラジオで雪女って題の時に、客室302号室は雪女です、とかありましたね。あれよかったですね。この句だと人間臭さ出し過ぎちゃってて」
鋤焼きの牛の産地を追跡す/小佐治
「BSEでトレーサビリティが導入されてからですね。アメリカで狂牛病が流行って1回輸入停止になってそこから牛のトレーサビリティって制度が始まって、ってだけですよね。ただ、わざわざ追跡しないから追跡す、ってのは面白いかもしれない」
ファンミーティング夏井いつきと大根干す/光音座
「お!」「つい、夏井いつきがあったか」「大根干す、は大根を干してたくあんやいぶりがっこを作る、季語なんですよ。夏井いつきは有名な俳人ですね、テレビいっぱい出てる人。夏井さんのファンミーティング、オフ会行ったら一緒に大根干しましょうって言った、そういう空想ですよ」「そういうファンミーティングしてたっていう嫌味なのかな」「かもしれないね。でも句としてはけっこう合ってるよね、夏井いつきと大根干すってなんかやってみたい気がするしなんとなく楽しそうだし」「いい女?」「いいえ、おばちゃん」
追悼の花にミモザは明る過ぎ/小川
「ミモザってどういう色してんですか?」「真っ黄色。庭先によくこぼれそうなボリューミーな黄色い花咲いてるじゃん、あれがミモザ」「なるほど、まあそうだよねって感じかな」

虎落笛ついにこわれた洗濯機/惟久里
「音の説明しちゃったな」「もがりぶえっていうのは冬の風が柵とかに当たってピューピュー音が鳴ってる状態。ピューピュー鳴ってる音と洗濯機が壊れたっていうのをこの句はかけてるんだと思うんですけど」「音にしないほうがいいと思うな。洗濯機の音になっちゃうもんねどうしたって。虎落笛、じゃなくて流し雛、とか雛飾る、とか全然因果関係ないほうがいいと思うけどね。雛祭りつひに壊れた洗濯機、ってなんだかわかんなくていい」(笑)
腰椎の麻酔の痺れ春浅し/企鵝
「わかり過ぎちゃうかな」「わかり過ぎちゃってダメなのか。いいなと思いましたけど」「浅し、が麻酔の浅いのとつながっちゃう」「まさしくそのとおりだと思います。椎間板ヘルニアとか腰椎のなんかの手術をしてその麻酔が切れちゃった」「麻酔と春浅し、は合い過ぎと思うけどなあ。ベタづきだと思うな。浅いとか深いとか言わないほうがいいと思うけど。まだ、春近し、のほうがいいと思う。それでも変だけどな」「鳥とか言っとけばいいんじゃないですか」「さえずり、とかがいいんじゃない、手術室みたいな感じがするから。なにか流れてるよねクラシックみたいなの」「腰椎の麻酔の痺れ囀れり、って外で小鳥が鳴いてるんだけどそれが響くような、鳴けば腰が痛むような感じだったらいいかもしれない」「春先の季感は合ってるんだけどね」「わかります。麻酔の痺れが残るっていうのはなんかいいんですよね。けっこういい句だと思うんだけど」「いい線行ってんだよ」
雨降ってついに飛べなくなるマスク/ときこ
「どういうこと? マスクが飛ぶって」「イーロン・マスクだよ」「そっちか。イーロン・マスクがこの間違法薬物が常習的に使ってるってスクープがあって、てことは飛べなくなるって、ロケットで飛べなくなることもあるけどハイになるほうかもしれない。いやでもマスクって普通の口を覆うマスクの意味もあるし、仮面って意味もあるでしょ。どのマスクを言ってるかわかんないな」「聞いてみたいなこれどういう意味か」「ときこさんより。最近道端にマスクが落ちてるのをよく見るので、雨でベチャッと落ちているマスクを詠みましたって」「それで飛べない、か。普通の解釈だったな、深読みし過ぎた」
薄氷が杖を突くなり割れてゐる/小川
「杖を突くなり割れている、ってこれこそ順接で、なにもないじゃんだよね。うすらひに杖を突けども、って言ったほうがいいんじゃない」「でも突けども、だと」「つまんないな。薄氷に杖を突きたる」「でもそれもつまんないかなって」「薄氷に杖、っていうのはことわざレベルの強さがあるから」「逆にしたほうがいいよね。水溜まりに杖を突くなり薄氷に、って逆に杖を突いたら凍ったっていう」「ハリー・ポッターぽいですね」
★追伸に破産しました大根干す/遊鬼
(笑)「いぶりがっこは違法になったからね」「いいんじゃないですかね」「最新ニュースでは復活したらしいよ。道の駅での販売でいぶりがっことか大事にしようって行政が動いて」「大根干す、いいですよね。この持ってき方が」「ちゃんと前向きでいいよね」「でもどうだろう、大根植う、とか大根掘る、とかいろんな季語あるじゃないですか。大根干す、は冬ですか」「干す、がいいよ。なにもなくなっちゃった感じが」「たくあんでも売るかって」「無一文感があっていいよ。家の中なにもなくなって空っぽの感じするね、大根干してるだけで。いやこれリアルだやっぱり」「リアルじゃないとできないですね。ここまできれいな句はなかなかできないですね」
立春大吉やつぱりついてない/翼
「まあそうですかっていう。裏切ったけど別に裏切れてもいないんだよな。難しいですね立春大吉、それこそ言葉が強いから。立春大吉中央特快なら死ねる、とかくらいまで言ってもいいんじゃないですかね」
豆撒きの松井秀喜が大暴投/小佐治
「松井とかよく出てた気がする、豆まきに」「でも松井ってピッチャーやってませんでしたっけ」「それはイチロー」「でも外野やってましたよね。肩いいんじゃないですか?」「句はどうでもいいね。松井の解説で終わった」(笑)
頑張つて抱きついてみる露出狂/たろりずむ
「今日も捕まってたね可哀想に。寒いけどスカートの下なにか履いてる?ってした人が」(笑)
混み入つて春のツイスターゲーム/みずな
「混み入つて、がツイスターゲームの説明過ぎるんじゃないかな」「ツイスターゲームってコンプラ的にテレビではもうできないでしょうね」「いまだにAVとかでたまにやる。Hゲームの王道だから」「ツイスターゲームって古いなあって感じ」
ドヤ街が終の住まひの竈猫/遊鬼
「かまど猫ってなんでしたっけ?」「冬のコタツの猫と一緒。冬の家にいる猫」
きつついな卒業式でブスが泣く/翼
(笑)「ブスこそ泣くでしょ、どっちかって言うと」「やっと卒業できると思って。この支配からの卒業」「単純に容姿をおとしめるのって?」「いいんだけどね、きつついな、がつまんないんだよね。逆がいいよね、美しや卒業式でブスが泣く、とか言うといい気がするけどね」「その時ブスが、言い方はあれだけど初めて可愛く見えたりとかね」「その女が悪いって意味でブスって言ってるんじゃなくて、卒業式でブスが泣くっていう情景をこの人の心の中の写真1枚に収めたことが面白いと思うんですよ。確かにブスって言葉がどうしても強過ぎちゃうんで容姿の醜さを言ってんじゃないかってすぐ言われちゃうんですけど、卒業式でブスが泣くその情景にこの人は感動したという風に思いますよ。だからきつついな、がつまんないんですよ正直。立春大吉じゃつまんないし、卒業式が季語だしなんとも言えないんだけど」「輝いて、とか?」「それも面白くないな。卒業式でブスが泣く、そのくだりは非常にいいと思います」
追悼を忘れてしまふ幸せよ/イチ
「ああ」「なかなか思い切ったこと言ってんじゃないの」「あの人が死んだことを忘れてる、あの人のことを忘れてるんじゃない追悼を忘れるんですよね。そこが面白いとこ」「切り替えのよさが出てんじゃないの。忘れて、がきついかもしれないけどね、言いたいことはわかるな」「幸せ、まで言わないほうがいいんじゃないかなって気がするけどな」「追悼を覚えてゐたる幸せよ、でも」「でも、済んだ感じ、ホッとした感じも出てるんだよね。そのホッとした感じがもう少し出るといいんだけれど。忘れるだと恣意的過ぎるから。南部虎弾さんの感じは出てるよ、気持ちはすごいわかる」
薄氷に閉じ込めてゐる失意かな/翼
「やだななんか。メンヘラの女」「メンヘラの女が作った感じしますね」「たぶんツイッターでしかいいねがつかない」「失意、を替えたいっすよね」「尿意」(笑)「どうやって閉じ込めんだよ尿意を」「凍らせときゃいいよ。閉じ込まってないよ出てるよ(笑)。薄氷と言い張つてゐる尿意かな」「それだったらそれでいいかもしれない」「おしっこしたら氷になっただけだよ」
ツインテをハンドルのごと春障子/翼
「左右にピョンとツインテールの髪の毛があってそれをハンドルのように、自分でつかんでるのか人がつかんでるのか」「イラマチオだよ」(笑)「ズボズボッてことか」「障子って言ったら決まってるじゃん、石原慎太郎のお兄さんがやってたんだよ。裕次郎って言ったほうがいいか」
※石原慎太郎が執筆し石原裕次郎の主演で映画化された『太陽の季節』の描写より。ただし、裕次郎は慎太郎の弟。
春泥にごつつい糞(まり)の置かれある/翼
「それだけですっげえ景色だよ(笑)」
ツインファミコンのディスクが故障春炬燵/翼
「ツインファミコンってなんですか」「カセットとディスクシステム両方使えるヤツ。ほとんど売れなかったね」「そもそもディスクシステムが全然売れなかったんじゃないですかね」「書き換えとか斬新だったよね今思うと」「ツインファミコンの意味がなくなってしまった」「ディスクが壊れやすかった」

木蓮から紙飛行機の墜落す/ときこ
「おお」「から、じゃなくて、に、でいいんじゃないかな。これだと引っかかったの落ちたって感じだからね」「句の題としていいですね。モクレンと紙飛行機の持ってき方はいいですね」「モクレンのふっくらした感じ」「モクレンに紙飛行機が引っかかってるその情景だけですごく子どもの躍動感が出るし。落ちる瞬間を言うなら確かにから、なんですけど、紙飛行機がモクレンに乗る瞬間を言ってもいいと思うんですよね」「その瞬間だけでもいい」「もちろん下から投げて上のほう向かって刺さる、これって墜落って言わないんじゃっていう批判もあると思うんですけど、下から刺さってもそれを墜落って言っていいと思うんですよ」「モクレンの花は大ぶりだからね、大ぶりの花と紙飛行機は非常にいいと思う」「コントラストが」「普通に窓の外に紙飛行機投げたらちょうどよその家の真正面」「どこにでもある花だしね」「引っかかる木としては最高のチョイスだねモクレンは。墜落までやんなくても、もう」「引っかかる、じゃつまんないんだよね。どうやったらいいか、これけっこう難しいとこで」「よくなる可能性あるよ」「夢を出してたペストの村~♪」「替え歌じゃないですかそれ」
うつかりとつひの境目梅開く/翼
「うっかり、とつい、ってどう違う? つい、のほうが意識があるか」「ついつい風俗行ってしまいました、うっかり性病もらってしまいました、その違いですね」「逆はないもんね、うっかり風俗行ってついつい性病もらうって」(笑)
以上で終了です!!
最後までお読みいただきありがとうございました!!