零回戦の正解は ［æ］ ※表記に大括弧が入る
中学校でアとエと間の音と教わる記号。cat,manなど、日本人には特に難しい発音である。
全員不正解。
一回戦は急逝した電撃ネットワークのリーダー南部虎弾追悼。
一回戦 「部」の字
剣道部皸（あかぎれ）隠し段位取る／小佐治
「美談にすることないのに」「先輩のあかぎれ見ちゃったくらいだったらちょっとカッコいいんですけどね。インターハイに行った先輩のあかぎれくらい言っとくといい、言い方としては」「隠し、がダメだと思うな」「皸の県大会で準優勝、くらいだとまあまあ頑張った感じは出ると思いますよ」
痛風の患部に風花（かざはな）のやさし／ときこ
「痛いと思う。優しくないよ」「風花ってなんでしたっけ」「晴れた日に降る雪」「風花が当たっても痛いから痛風は」「風が当たって痛いから痛風なんですよね」
蜜柑着く部屋ごと蜜柑箱になる／惟久里
「部屋ごと蜜柑箱になる、メチャクチャ面白いと思うんですよその発想は。ただ、着く、がつまんないですよね」「来る、くらいだと思った。普通日本語的に」「部屋ごと蜜柑箱になる、はいいですよね貧乏くさくて」「受験後、とかにしちゃう？ 季重なりだけど。受験後の部屋ごと蜜柑箱になる」「愛媛から上京してきて、部屋の荷物がまだなんにも届いてないのに蜜柑が先に届いたと」「上五、季節のもの入れたらいいんじゃないかな」
女王の部屋の兎と夜を越す／企鵝
「放置プレイで忘れられたんじゃないそのまま。縛られたまんま解かれるの忘れて一晩経っちゃった」「女王様の放置プレイで、女王様が飼ってるウサギと一晩過ごした、そういうことかな」
快活クラブちよい雪で中止／翼
「快活クラブってネットカフェのことだと思うんですけどね」「そうなの？ 老人の健康クラブみたいな」「違いますよ。快活CLUBって有名な、スーツのAOKIグループのネットカフェです。全然意味が違いますね」
帰宅部の群れを木枯らし押している／小佐治
「押す、が普通かな。帰宅部って群れないからな、群れのイメージがない」
初霜の路地に書きたる肉の部位／翼
「ちょっと面白いかも。カルビとかレバーとかロース、タン、ハツ、そういうのを書いたってこと？ 例えばカルビって道に、アスファルトに。でも霜って言ったら草ですよね、アスファルトに霜できないですよ」「土だよ普通」「土に霜柱ができることを霜って言いますよね。路地に書く、だから初霜の路地にカルビって書くわけですか？ 路地に肉の部位書くのは面白いと思うんですけど、土が盛り上がっている部分に肉の部位書くのって」「霜が降りる時期だから、寒い日ってこと」「寒い日にチョークで書いたってことですか？ 道にカルビとかロースとかチョークで書いちゃった、まあ石でもいいですけど」「牛の分解図みたいな」「そこまでは読めないなあ」
褞袍とはｆｕｎｎｙな部屋着渡米せよ／ときこ
（笑）「せよ、変じゃないか？」「強過ぎるだろ突然」「褞袍とはfunnyな下着だと言はれ、くらいでよかったんじゃ。そうすると留学生が来て、なんだそのジャケットはって言われて、これはどてらだクラシカルジャケットだって、そういう会話をしたとしたらいいけどね。部屋着が渡米せよ、っていうのは」「流石に飛び過ぎだな」
上大岡皮フ科の患部コレクション／光音座
（笑）「謎だなあ。まず上大岡皮フ科って固有名詞あるかどうか知らないですけど仮にあったとして、そこに患部コレクションがあったんでしょう、霜焼けとかアトピー性皮膚炎とか魚の目とか」「かんぶって、偉いほうの幹部かと思った」「理事長とか」「そう、そこの院長とか」「院長が学会で発表するときに使った写真とかが貼ってあるんじゃないですかね」「上大岡好きだね」
※実在しました 表記は「上大岡ヒフ科」
なまはげの見たことのある後頭部／企鵝
「いいね」「いいですね。なんでいいかって言うと、わかっちゃった、なんだ３軒隣のおじさんじゃないか、魚屋さんか三河屋さんとか。言い方がうまいですね。結局町内会でやってるんだなって子ども心にわかってしまって、今度魚屋に行ったときにおじちゃんなまはげやってたでしょって言っちゃうわけですね」「なまはげってあんまり後ろから見ることないと思うな。あまりなまはげの後頭部ってところにリアリティがないかもしれない。正面から見ないとなまはげってわからないじゃん」「でも帰るじゃないですか。子どもおどかして帰るときに後ろが見えちゃったとか」「驚いて損した」「後頭部、がでもどうだろう。後頭部が見えるかどうかは怪しいですね。びっこ引いてる後ろ姿はわかるんだけど後頭部が果たして本当に見えるのか。髪の毛の部分もちゃんとあった気がしますねなまはげに。カツラですよね」「頭頂部、のほうがいい」「難しい。俳句としてはすごくいいと思うんだけど、後頭部見えたかって言うとやっぱり嘘っぽく聞こえますね」「惜しいよね」「いいと思いますよかなり、俳句のテーマとして」
日脚伸ぶ服部時計店の角／光音座
「中、にしたら普通に。角にしないほうがいいと思うな、時計屋って面白いのに」「いや、この角もいいと思いますね。時計店の角ってのが昭和の情景だと思うんですよ」「時計屋の隅っこってことなのか、角なのか。角って言うとどうしても曲がり角のイメージになっちゃうから」「服部時計店がたぶん十字路の角にあったんだと思うんですよ。で、そこの角の端っこに飾る高級な時計、カシオとかセイコーとか」「隅のほうがいいと思うなあ。角だと景がでか過ぎちゃう気がする」「でも服部時計店って古い感じがしますね」「固有名詞はうまいと思うよね」「10年くらい置いてある目覚まし時計とか、カシオって日焼けしたポスターが貼ってあるとか、そういうイメージですね」「光音座さんから、服部時計店は銀座和光のイメージですって。銀座4丁目の角のところですね」「服部時計店のネーミングはいいと思う。塚本の歌で出てくるな、山川呉服店。それと同じ雰囲気がある」
※いふほどもなき夕映にあしひきの山川呉服店かがやきつ
山川呉服店破産してあかねさす昼や繚の帯の投げ売り
あさもよし紀州新報第五面山川呉服店密葬／以上、塚本邦雄
福分けや部屋にブランド冬苺／惟久里
「お福分けって言葉がある。3月の手紙の言葉、季節感のある言葉ってことか。でも冬苺、って言ってるからこっちが季語か。福分けはお裾分けの意味もあるらしい」「お裾分けでもらったってことでしょ。お彼岸のあたりってことか」「惟久里さんから、父母の故郷の九州ではお裾分けのことをお福分けと言います、方言かも、と。お福分け、いいですね。お裾分けって言うより優しい感じがする。あなたも一緒に幸福になりましょうってことなんでしょうね。そうすると福分けやのや、が変ですよね。だってお裾分けや、って言ってることだから」
泣きながら女出てくるラグビー部／翼
（笑）「タイムリーですね。今ちょうどこういうことばかり話題になってますからね。有名なミュージシャンNさんとか」
春を待つ部室の匂いにエイトフォー／小佐治
「エイトフォー自体が夏の季語っぽいからな。春を待つ、あんまり効いてないな。やっぱエイトフォーはもう夏だよね、制汗剤だから」
雀卓のある野球部の冬温し／翼
「まあ暖かい感じはするけどね。雀卓のある野球部って時点で底辺高校な感じが出てて、それはいいんですよ、しかも大会は２回戦敗退くらいの超弱小高校で。一応野球部は作ったけどエース以外やる気ない、そういう感じまで出る。冬温し、が合ってるかどうでしょうかね」「部の字、部活ばっかになっちゃったな」
細部こそ宿るディテールæかəか／小佐治
（笑）「発音記号来ましたね。発音難しい」
大部屋に部族全員春を待つ／ときこ
「部、を2つ遣ってきた」「さらわれた感じがする」「さらわれたというか、これはアボリジニーとかのそのまんまの感じじゃないでしょうかね。大部屋にいて暖を取って、暦の上では今日から春だって儀式をする」「春を待つ、が雑かな」
相撲部の廻しの揺らぐ寒の水／企鵝
「寒の水、はよくできたと思うけどね。まわしの揺らぐ、があんまり」「揺らぐ、ポロリする、もろ出し」「干してあるんだと思うんだけどな。すごい長いからねあれ」「そうしたら揺らぐ、変じゃないですか。例えば稽古中にパワハラ顧問が、もっと気合い出せって水をかけた、だったらまわしの揺らぐ、って意味で取れるかも。あるいは乱取りみたいな稽古してまわしが」「揺らぐ、って柔らかい感じがするしな。激しい感じはしない」「まわしの激しく振動する感じを詠んだらいいんじゃないかな。まわしのきしむ、なんてそんな日本語はおかしいんだけど、もう少し硬い言葉が。揺らぐ、って柔らかい揺れ方じゃないですか。それよりも硬い揺れ方のほうがしっくり来るんじゃないでしょうかね」
恥部を指す隠語と知らぬ名付け親／小佐治
（笑）「満子って付けちゃった」「満子さん有名ですね」「お満子」「ハマグリちゃん可愛いよね」
蝋梅や子どもの部だけ見て帰る／翼
「ロウバイは冬の梅です」「黄色い梅」「例えば音楽の発表会に行ったけど、嫌になって帰ってきちゃったとか。孫の部だけ見て帰ったとか、いろんな取り方できますね。難しい。これいいと取るのか、はっきりと情景が出てこないところが美しい気もするんだけど、ドンピシャでこの光景ってのが思いつかないです」「単なるロリコン？」「そう取りますか、だとしたら句としてはつまんないけどな」「ダンスコンテスト」「その感じはわかります。シニアの部もあってそっちは中学生とかが出るんだけどもういいやと思って帰っちゃう」
南部藩春を背負ってきた男／小佐治
「調べたら盛岡のあたり」「ああ南部鉄器の」「具体的な有名な人がいるのかちょっと歴史知識がないとわかんないな」「北国だと春を背負って、って合い過ぎちゃうんだよな。まあ電撃ネットワークへのあいさつとして取るかな」
冬の蠅部分入歯はどこ行った／惟久里
（笑）「ちょっと明るいな」「明るいけど蝿にすることはないだろうと思う。いくらなんでも可哀想過ぎるな。部分入歯はどこ行った、っていいと思うけどね」「どこ行った、って言うと急にギャグになっちゃうからな。部分入歯を引き上げる、とか」「置きどころ、くらい」「ああいいですね。でも蝿である必要がわかんないな。難しい。冬の月、じゃダメなのか」「柔らかい感じにしてほしいな」「そうですよね。寒の水、じゃダメなのか。寒の水じゃ今度は部分入歯と近いですね、洗うことになっちゃう。もっと外したほうがいいな」「冬日向、くらいがいいと思うけどな」「冬日向部分入歯の置きどころ。だとしたらいいかも」「日向、とところ、はちょっと近いけどね」「日脚伸ぶ、は違うんだよな。冬日向くらいがいいんじゃないですか」
肝心な部分が見えぬ雪女郎／翼
「真逆ですね、ここまで行っちゃうと。言ってることはわかるけど」
部長から贈られているポインセチア／小佐治
「部長、の意味がない気がするけどな」「部長から自宅に届くポインセチア、くらいがいいな。お前の家知ってるぞって」
春や春局部を狙ふ一眼レフ／翼
「ああ」「やり過ぎな感じはするけどな。一眼レフの先の溝、くらい言っといてそれ以上言わないほうがいいんじゃないですかね。局部って言っちゃダメだと思います」「当たる、にしようと思ってた。近づき過ぎてレンズが当たっちゃった」「そういう撮影会ありますよね」
校庭の端の相撲部寒波来る／翼
「まあ普通じゃないか」「大寒波、って相撲取りの名前っぽくない？」
春立つや空きたるままの子ども部屋／翼
「事故で子どもを亡くした親の句と取るか、息子が大学に行って上京してしまって子ども部屋が空いてしまったと取るか。前者のほうがいいと思うんだけどね。前者だった場合悲しい交通事故とかで6歳くらいで亡くなっちゃって、子ども部屋用意しといたのに使わなくなった。ストーリー詰め込み過ぎかそうすると。春立つ、とも合っちゃってるしな」「春立つや、あんまり暗い季語にしちゃうとまずいな。それこそ冬日向、くらいにしたらいいのかな」「日脚伸ぶ、でもよかったんじゃないですかね」「そっちのほうがいいな」「死んじゃって可哀想って思うんですけどね、読んだ感じ」「不要になりし、だと強過ぎる」
灰皿に潤目鰯の一部分／企鵝
「しっぽのとこかな。節分の感じがするな」「干物で食べるんですか？ 小っちゃいんですか？」「イワシ飾るじゃん。節分のイメージで作ったのかな」「20cmくらいに達するそうです。手のひらくらいか」「一部分、がピンと来ないな。ちゃんとしっぽとか目とか言ってあげたほうがよかったかな。しょうがない、部、だからね。自分で作るときにはどこかちゃんとした場所言ってあげるほうがいいと思うな、しっぽでも目でも、あごでもいいし」「でも部位があったとして、灰皿に乗ってるのは、そんなに暴力的にしなくてもいい気がするんだよな」「玄関にあるくらいはいいと思うけどね、灰皿はやり過ぎかな」「食べたってことですよね、タバコ吸う人がいる場所でウルメイワシをかじって食べたと。その時に頭を吐き出して灰皿に乗っけた」「ピスタチオとかにしたら。灰皿に潤目鰯とピスタチオ、って言うと、殻を入れるイメージで灰皿の必然性がちょっと出るかもしれない」
静電気にのけ反つてゐる囲碁部かな／翼
「囲碁部っていうのを馬鹿にした句なんだけど、この馬鹿にする具合がいいかどうか。わかるんだよ囲碁部とか将棋部とか文芸部とかひょろいオタクっぽいやつがいるってそういうイメージで作った句に見えるんだよ。囲碁部が合っているかどうかよく考えなきゃいけない」「文芸部くらいでよかったかも。最後のかな、が気持ち悪いなと思ってた。5音のそういう部活が思いつかなかった」「のけ反る、も言い過ぎな気するんですけどね。あいつ喋るんだっていう感動があってもいいと思うんですよね。あいつの声初めて聞いたよとかそういう感じの。ひゃあとか、お前どこから声出してるのって感じのほうがいいんじゃないか」「のけ反るんだよ。強いとバシッてなるんだよ。でも囲碁部、やっぱ指すイメージが。手の動きがあるといいんだよな」
青鮫を老人の部類に入れる／ときこ
「どういうこと？」「歯が折れるから。鮫って上の歯がなくなるんだよ。歯が欠けやすいんだよ。歯のない鮫を老人にしてるってことじゃ」「肉は美味、フカヒレに加工される。どういう意味でしょうかね。青鮫の老人だったらわかるんですよ。歯が抜けるってこと？ でも鮫はすぐ生えてくるんですよね。青鮫のそれ以上の意味が取れないな」「まったくわからない」
ウクライナのと或る部分の福寿草／翼
「たぶんチェルノブイリを揶揄してるんだと思いますよ。放射能を浴びた福寿草って言ってるんじゃないかと思う。あるいは戦場、ロシアの砲弾がいっぱい飛んでくる場所の福寿草。福寿草、毒があるんだ。元日草、朔日草ともいう」「正月の唯一の植物の季語だから」
二回戦は翼さんのお気に入りのアイドル、レイナにゃんの誕生日祝いということで。
二回戦 「にゃ」の音
暖房を100℃にして喰ふニャウエッセン／光音座
（笑）「ニャウエッセン、ダメでしょう」「早く作っただけじゃないか」「猫に食わせたって意味かもしれない」
ラニーニャをなぞり砕氷船の白／ぽっぽ
「ラニーニャ現象ってなんだっけ。急に寒くなるんだっけ」「エルニーニョの反対」「そうですね、寒くなるほうがラニーニャ現象。ラニーニャはスペイン語で女の子、少女の意味。じゃあラニーニャをなぞり、って？」「ラニーニャ現象が起こるその際々のとこって意味じゃないですか？」「地図とにらめっこして、ラニーニャ現象が起こらないギリギリのところを、砕氷船だから寒い所をわざと行っている」「たどる感じじゃないの。でもラニーニャが目視できるものじゃないからな」「砕氷船の白、ってメチャクチャカッコいい言葉だなと思ったんですけどね。ラニーニャをなぞる、っていうのがラニーニャ現象で寒くなってる地域をなぞるって意味なのか、どうなんでしょうね」「そこだけだな」
ラニーニャを詳しく述べる置炬燵／企鵝
「置ゴタツ、効き過ぎかな」「難しいですね。ラニーニャっていうのはスペイン語で少女のことなんだよ、意味としてはこうでこうでって、その人は教授なのか専門家なのかもしれない。あるいはウィキペディアでかじっただけの知識なのかもしれない」「スペイン語系に多いんだよなニャの発音って」「ñの字遣うとだいたいニャって発音するから」
ポンと蹴りニャンと鳴かせて日脚伸ぶ／小佐治
「バカップルぽいなただの」「ソフトSMな感じなのか、少し馬鹿っぽい感じですね」
★激怒したメロスは蒟蒻掘ってをり／光音座
（笑）「どう取るかな。もちろん『走れメロス』のメロスなんでしょうけど、激怒したメロスがこんにゃく掘ってる、その滑稽なシーンを持ってきたのがどうなんだろうな」「こんにゃく、合ってると思う。メロスって戦ってる人たちが王様とかさ、こんにゃくみたいな名前な感じした。ナンセンスとして好きだけどね」「掘っていることがいいんですか？」「哲学的な感じがするよ」「いろんなイメージが取れるからなここから」「走らなくてもいい、なにか哲学っぽい感じでよくわからないギリシャ人が」「政治はわからんとか言ってるから。少し観念的ですけど。解説が非常に難しいな」「頭がバグってる感じするんだよね。脳がグニャグニャになってく感じがしてね、困憊感があるというか。こんにゃく掘るのは脳が揺れてるイメージがする
水温むニャロメの目玉飛び出して／翼
「ニャロメはキャラクターですね、赤塚不二夫の作品に出てくる。温むんですか？ 冷たいほうじゃなくて水があったかくなるほうでいいんですか？」「涙目だから。潤む感じだから」
仔猫との話し方にゃで終わる漢／惟久里
「漢（おとこ）って言わないほうがいい気がするんだよな」「お前絶対猫鍋にするにゃ。説明がくどいな、17音全部説明だからな。もう一歩さっぱり詠んでほしいかな」
チーターのにやに力込め春を待つ／翼
「ああチーターか」「チーターって」「水前寺清子」「なんでニャなんですか？」「幸せわんにゃ♪って歌うんだよ。癖で、真似する人はみんなニャって言うんだよ。わかんないか」
立春の楽屋にずらり般若の面／ときこ
「春寒のほうがいいと思うな、立春より」「ずらり、かあ」「ずらりもダサいな」「仮にこれ能面だとしたら、能面って楽屋にずらりはないんですよ。能楽師の家にあるのはわかるんですけど、楽屋にずらり、はイメージがわかない。博物館にずらり、だったらわかる。能面の美術館とか」「あまりこの句のシーンがわからないな」「仮にずらりあったとしてなにがいいかって言うと」「やっぱ春寒とか余寒とか冴え返るとかのほうがいいよね」「冴え返る、いいんじゃないですかね。冴え返る般若の面の並びをり、をりじゃつまんないけど」
宿坊の氷こんにゃく蝿止まる／小佐治
「宿坊っていうのは泊まれる寺のことでしたっけ」「精進料理を食べる。蝿止まる、は悲しいな最後。こんにゃく料理くらいはいいけどね。蝿止まる、を変えたらよくなりそうな気がする」
バレンタインデーにやつぱり間に合わにやい／翼
「可愛く読んで」「間に合わにゃいは微妙じゃないですかね言い方として。義理チョコでごめんなさい、じゃないかな」「手作りチョコ作ってたんだよ。固まらない、下痢みたいになっちゃったけどもらってって（笑）」
ＡＩの描いたニャロメや炬燵猫／企鵝
「コタツ猫？」「コタツ猫とか竈（かまど）猫とか、冬に家にいる猫。こういう発想の句はこれから出てくるかもしれないな。いいんじゃない、このパターンは覚えといて」「コタツ猫、合いますか？」「猫と猫だからな、そんなにすごくない」
紅梅白梅老若男女とオカマ／翼
「雑だな」「微妙なとこですね。オカマっていう新しい属性を作ったわけですけど、紅梅白梅が並んでるとこに老若男女とオカマって、じゃあレズビアンはどこ行ったのとかいろんな批判も来そうですね」「LGBTQ」「ああいいんじゃないですか、紅梅白梅LGBTQって言っとけば」
イーウィニャは嵐の神や冬薔薇／ぽっぽ
「イーウィニャとは嵐の神のこと。だったらそのままじゃん、前半辞書じゃん（笑）。台風の名前であるそうです。台風の名前って各国が順番で言葉の案出すじゃないですか。ミクロネシアの出した言葉だそうで、嵐の神を意味するそうです」
ふにゃふにゃの革手袋で撫でられて／ときこ
「ほお」「ふにゃふにゃ、ありましたね。これは思いつかなかったな。いい発見だと思いますね。ふにゃふにゃの革手袋なんですけど」「もっといいものがある気がするな、ふにゃふにゃだと」「ふにゃふにゃの革手袋、むしろ高級品ですよね。本当の5万くらいするヤツ」「撫でられて、もう少し違うことしてほしかったね」「たぶん撫でられてる側は、そのふにゃふにゃ感わかんないと思うんですよね。手にはめてる人は、その手袋がいかに柔らかいかをよくわかってる。とてもフィット感がある、着け心地がいいなってのはわかるけど、撫でられてる側は硬いかどうかよくわからないと思います」
おやすみにやさいインフルエンザが治らにやい／翼
「鼻声になってるんですね」「鼻つまんでる？」「黒柳徹子だよ」
コニャックをさらりと干して寒の月／龍
「ああ」「コニャックはブランデー。カッコつけ過ぎじゃないか寒の月とか」「さらり、があんまりな」「コニャックさらり、いいんじゃないですかね。テキーラさらりじゃ嫌だし、マティーニさらりでもやり過ぎだし。コニャックさらりってのは無理して飲んでるんじゃないですかねカッコつけて、食道が熱くなって。でも結局普通なんだよなそういう姿って」「飲んだだけじゃダメだからな」
苺より小さき口のレイナにやん／翼
「これは挨拶句としていいと思いますね」
冴返るニャールのサガを贈られて／惟久里
「ニャールとは、アイスランドのサガ文学の最大最高の傑作だそうです。すごい知識の範囲だな。ニャールのサガって言っても、あるいはサガって言葉だけでも通じるらしいです。サガは古いアイスランド語のサギア、言うに相当する動詞から来てるんだって。ニャールのサガというのが13世紀くらいの有名な文学作品だと」「そうすると冴返る、合ってるのかな。無学ゆえにわかりません」「作者不詳だって。アイスランドの生活を広範に描き登場人物の複雑な性格を備えている、だって」「贈られて、があんまりポイントアップになってないかな」
般若湯ぬる燗にして通夜の客／ぽっぽ
「ぬる燗、がつまんないと思いますけどね。般若湯と言い直したる通夜の客、でよかったんじゃないですかね。堂々と酒飲めばいいんだけど、一応お坊さんが死んだから気取って言っとこうって意味で」
ペニャロールの選手来日冬の虹／小佐治
「確か南米のサッカーチーム」「ウルグアイ」「トヨタカップかなんか来たことあるんじゃないですか？」
にゃあと躰ねじる猫ふとん干す／惟久里
（笑）「どこで切る？」「猫、で切るんじゃないの。普通の日当たりのいい風景だな」
凩やあんにや得意の旗包み／翼
「あんにや、は兄さんの意味」「今思ったけどアーニャがありましたね」「あーすっかり忘れてた！ あんなに毎日言ってるのに」「旗包みってなんですか？」「ゴルフの旗にぶつけてカップに落とす技。『プロゴルファー猿』知らないの？」
チュッ・ニャ・ディンの時代の家に目貼りする／小佐治
「もう知らない言葉ばっかり（笑）」「ゲリラ指導者、インドネシアの人。アチェ戦争におけるアチェゲリラ指導者の１人。インドネシアの女性」「ジャンヌ・ダルクみたいな感じ」「オランダ領東インド政府はアチェ王国に宣戦を布告しアチェ戦争が勃発する。じゃあインドネシアに旅行して、その頃の家を」「インドネシアってあったかいんじゃないの。目貼り、合わないよ」「ちょっと無理があると思います」
寒月へクレッシェンドのマラゲーニャ／翼
「アイ・ジョージです」「フラメンコの舞踊、ファンダンゴから出たフラメンコの一種。マラガ地方の」「歌を知ってるとわかると思うけど」
コニャックの氷をぶつけ寒の夜／翼
「似たの出た（笑）」「貧困ねイメージがみんな」「だいぶ違う。さっきはさらりと干して、だったから。こっちは氷ぶつけるんで」「こっちはロック、さっきストレートって感じ。飲み方が違う（笑）」「ぶつけ、はわかります。喧嘩してグッと飲んでガンって机に置いてグラスの中の氷をぶつけたか、あるいは氷を出してマジで投げたか」「いや、ブランデーグラスだから」「なるほど、カランカランのほうですか。でもぶつけたら、寒の夜じゃないほうがいいんじゃないですかね」「静かな夜のほうがいいからな、寒いほうが。音がするじゃん」
以上で終了です！！
最後までお読みいただきありがとうございました！！