零回戦の出題は今井聖さんの処女句集です。当時三十四歳。翌1985年「寒雷」同人。
正解は 「乾電池」。
冬の浜辺に刺さった乾電池。米子の海の向こう側の文字が書かれているのかもしれない。
全員不正解。
新年一発目一回戦の席題は、句会当日がまーゆちゃんの誕生日ということで。
一回戦 「油」の字
(★=特選)
吹雪く夜のマーボー豆腐にラー油足す/翼
「寒いから」「派手なイメージにしたかった。吹雪く、だと寒さが出ちゃうか」「寒いからもっとポカポカしたいのかと思った。ラー油が小っちゃいからね」
油圧式ジャッキで上げる霜柱/ぽっぽ
「上げる、で切るんだろうな。霜柱を上げてるんじゃなくて、ジャッキで上げてるとこに霜柱が立ったと読むしかないな。でもこれは切れてるように見えないかなあ」「油圧式ジャッキで別の物上げてるとするしか」「これだと霜柱上げてるみたいだからな。霜柱と油圧式ジャッキの組み合わせはいいと思うんだけど」「油圧式ジャッキ静かに、とかゆつくり、とかでいい気がしますね」「霜柱を上五に持ってきたほうがいいと思うな」
だし巻と食べるラー油とちょろぎかな/ときこ
「ちょっと組み合わせが近かった。もう1個くらい外さないとダメだな」「ちょろぎってなんですか?」「なんかの植物だよ」「おせちに入ってる、あんま食べたくないヤツだ」「箸休めだよ、味変のための」

夢洲の油まみれの寒鴉かな/桃猫
「夢洲(ゆめしま)は大阪の埋め立て地」「万博やるとこ」「万博批判か、そうすると。万博に遣う金があるんだったら能登半島に出せよっていう」
福引の油取り紙二枚入り/ゆり子
「これライトでいいんじゃない? 福引の油取り紙、までかなりよくて」「二枚、がいらないな」「福引の油取り紙のつまらなさ、非実用性。たとえば油取り紙って15歳とかがもらうとかなり使うんだよね」「よーじやで買ってたよね」「修学旅行で」「京都で買ってたね。全部色変えちゃうくらい油出るんですよ、中学生や高校生くらいだと」「二枚入りはどうしたら?」「福引の油取り紙そつと捨て、とか」「そつと捨て、はなんかくどいような気がするけど」「下五を誰か教えてくれ(笑)」「二度当たる」「ああいいですねえ」「二個当たる」「それはかなり面白いなあ。絶対使わない、両方ゴミになるんだけど。油取り紙使う世代が若いからねえ、福引しないですからねそういう世代は」
クリスマスローズ給油所休憩所/小川
「クリスマスローズって?」「花。クリスマスには咲かないんだよ」「ガソリンスタンドの待合室ですね。洗車を待ってるのかな、だいたい洗車くらいでしか待たないもんね。ガソリン入れるときって1~2分で終わっちゃうから。休憩所使うときって洗車かタイヤ、オイル交換とか」「年末っぽいね」「給油所休憩所、ってジョイマンみたいな言い方だよね。給油所の休憩所、でよかったんじゃないかな」「いや、別のとこ行ってんだと思うよ」「給油所から休憩所に行く」「これも被災の感じなんじゃないの。給油所と休憩所しか行くとこがない感じ」「給油所と休憩所、並列なんですね」
環七の油の浮いた塩ラーメン/小佐治
(笑)「だからなに?って句だよね」「いや、塩ラーメン油浮かないよ。これは食べてる人の手が汚いっていう」「器よく洗ってないとか」「環七で車停めるような運転手の指が汚いって言ってるんだよ」「ディスってるじゃないすか」「いや、句がそういう句だから。俺が言ってるわけじゃない」「そうすると店長の親指とか入れたほうがいい気もするけどね」「バターは入れるけどね」
初空や石油の匂ふ作業帽/企鵝
「40年前のNHKのドラマだ」「初空、と下のほうが微妙にアンマッチな気が」「労働バンザイって句」「下の七五もくどいんだよね」「前田吟とかが出てて、職工の感じがする」「今の羽田空港の事故を言っている句ではあると思いますけど違うかなあ」「言い方きつ過ぎるんだよね」「リアルっぽくないかな」「これこそ季語を霜柱くらいにすれば。もっと貧乏くさい季語にして。そうすればちゃんと哀しさが出る」
雪国へみんなで送る油風呂/桃猫
「男塾名物」「フライド人間になっちゃう」
※油風呂は、漫画・アニメ・実写映画『魁!!男塾』に登場する拷問。油を満たした大きな鍋の中に入れられ、下から火をたかれ煮立たせられる。なおかつ油の上には火の着いたロウソクが紙の舟に乗せて浮かべられ、ロウソクが燃え尽きるまで油の中にいなければならない。熱さに耐えられず外へ出ようと身動きすれば、たちまち油に引火し中の人間は黒焦げになる。
給油所の奥の売れないクリスマス/小川
「おっ」「売れないクリスマス、で止めたのがつまんないなあ。給油所の奥になにがあったら面白いだろう。例えば給油所でなぜかネックレスを売ってたとか。店長がパチンコの景品で取ってきたアクセサリーとかが置いてあったり」「なにか物にしたほうがいいね」「男の子が喜びそうな物、よくわからないなあ」
油絵の視線の巡る冬館/企鵝
「うまいこと言ってそうでうまくないな。肖像画の目が動いてるのか、観ている人の目が動いてるのかわからない」「正面向いてる絵って右から見ても左から見ても目が合ってるように見える、それを視線の巡る、って詠んだんでしょう。自分の目ももちろん動くし、肖像画の目も動く。でも巡る、がつまんないかな。油絵の視線、までは面白い。冬館、はしょうがないと思うこの置き方は。油絵の視線がどうだったら面白いかな。油絵の視線そのまま、とか固定されるとか、視線に殺される、とか。殺されるは言い過ぎか」「巡る、だと弱いな」「目が合い続け、とかいいんじゃない」「それだと当たり前すぎるんだよね。巡る、はうまいとこ突いてきたんだけどやっぱり外しちゃった感がある。言ってることはわかるんですよ、情景はすごくわかるし、これを俳句にしたら面白いってこともとても伝わってきます。発想は素晴らしいね、こういう発想を油、って言葉からパッと発想できるのは相当学のある人かなと思っちゃいますね」
石川に油田が発見される夢/桃猫
「佐渡にも金山があったし、あそこら辺に油田があってもうれしいかもしれない。油田があったら太平洋戦争起こらなかったかもね」「泥水はいっぱい出てるんだよね、液状化になって」「シェールガスでも出ればいいのにな」
元旦のトカレフ包む油紙/遊鬼
「トカレフというのは拳銃の名前ですよね、ヤクザ映画とかでもよく出てくる。油紙の意味がないですよね」「ドラマとかでよく油紙で包んでますけどね」「湿気に弱いからじゃない?」「あ、本当だ。湿気で錆びたりするのを防ぐためだって。じゃあ元旦、に意味がないんだ」「元とガンをかけてる?(笑)そこまで読む必要はないか」
去年今年油で揚げるパンの耳/ときこ
「去年今年、合わないな。5月か6月辺りいいと思うな」「子どもの日でもいいですよ。子どもの日だと、本当に貧乏な家庭の感じがするけどね。去年今年、年越しの感じで言っちゃうと餅も買えないって風に見えちゃう。合うかどうかで言うと合わない」「新緑の頃がいいと思うな」
灯油買ふ監視カメラに背を向けて/たろりずむ
「いいんじゃない?」「京アニっぽいよ」「まさしく犯人の心理っていうのが、誰が読んでもわかる感じですね。わかりやすいんです、東野圭吾くらいわかりやすい。監視カメラを探しつつ、くらいでよかったかも」「たまたま映っちゃったくらいでいいと思うんだよね。背を向けて、だと意思が入り過ぎる」「探しつつ、だとわかりやす過ぎる。でも句としてはメチャクチャいいなあ。言いたいことはわかる」「監視カメラに映りつつ、くらいのほうが」「意図がないほうがいいよ」「映りつつ、だとそもそもそれを気にしてるってことが悪意だの放火の気持ちがあるわけだから、だとしたら映りつつ、がよかったと。なるほど」「たろりずむさんより、気にしつつ、と迷いましたって」「意思がないほうがいい」「映りたる、だと自信満々なんで、映り込む、とか」
被災地に蝦蟇の油と餅送る/翼
「ガマの油っていうのは江戸時代とかに万能薬として扱われた伝説のものなんですけど、実際に薬としての効果はあるかないかよくわかってない。ただ観光地でガマの油売りってのが芸として残ってるんですかね。にせものの傷を作って、ガマの油を塗るとほら傷が止まったっていう芸をやるんですね。それが落語とかでもあった気がする」「しゃれ効いてていいね」「なんでもかんでも送ろうっていうのに対する一種のアンチ」「千羽鶴に対抗してるのかな。千羽鶴とか総理大臣とか送ると迷惑ですからね」「風流だなって感じもする」「被災地、は言い過ぎじゃない? 避難所くらいでよかったんじゃ。被災地って言うと流石にディザスター感が出過ぎちゃって」「避難所に送るってピンポイント過ぎない?(笑)嫌味が強いよ」「来たる、くらいがいいんじゃない? なんか明るいじゃん。もちろんナプキンとか本当に必要なものが来るんだけど、なぜかガマの油と餅が来たって、ツイッターに上げられてこんないらないもの来たって」「保湿にはなりそう」「千羽鶴はいい着火剤だって言ってる人いたな」「いや千羽鶴は燃やせないんだよ。捨てるにも捨てられなくて困るって。気持ち悪いから燃やしたり捨てたりできないってよけい邪魔」「だからChim↑Pomが千羽鶴集めて展示してましたね」
給油所はずらり行列寒鴉/惟久里
「ずらり、がつまんないですね。給油所と寒ガラスは合ってると思うんだよ。給油所の人を抜かして寒ガラス、でよかったんじゃないかな」「被災句あるある」「ずらり行列、は言い過ぎなんだよ。人がいっぱいいる姿を言わずにいてほしい」「給油所と寒ガラスは、殺伐とした感じが出てる」「カラスって怖くて神秘的な存在だから、給油所に人が並んでる横を寒ガラスがサーって飛んでいった怖さがありますね。ただ言い方が」「パチンコ屋じゃないんだから」「パチンコ屋にずらり行列、だったらわかる」「雑な言い方、なんにも興味なさそうな他人事感がすごい(笑)」「惟久里さんより、給油所は野郎だらけや寒鴉」
石油ストーブ息を吹きかけたら点火/ときこ
「どういう意味なんだろう」「火の回りが遅いときフーって息を吹きかけると火が強くなる」「ダルマストーブのことですか?」「古くなってくるとなかなか点かなくなる」「単1電池を入れてカチカチカチってやるんでしたっけ」「なかなか点かなくなるからマッチ突っ込んでフーってやる」「って言うと、冬のあるあるを詠んだ句なんですか」
黄粉餅醤油を垂らし祖母の御前/小佐治
「好きだったんですね」「特殊だよね。きなこ餅って普通は砂糖かけて甘ったるくして食べるんだけど、みたらしみたいな変な味になるんじゃないかと。祖母の写真、とかのほうがいいかな、祖母写る、とか。遺影、じゃつまらないしなあ。あんまり面白くないか句自体が」
ローションがないから油冬館/桃猫
「かぶれるんだよねサラダ油」
小正月今日もお付けに油揚げ/ゆり子
「お付けは味噌汁のこと」「今日も、がダメだな。も、を遣うなら変わったものじゃないと。突拍子もないものじゃないと、も、をつける意味がない」「フリーズドライのおみおつけ、くらいでよかったんじゃないの」「小正月は女が休む時。手抜きのものはダメ、小正月と合い過ぎちゃう」「日常を狙ってみたんだけど」
水涸れて道路に油染みの虹/光音座
「水かれて、が下手だと思うな。道路に虹が出てるってことは水たまりみたいのがあるんだから」「石油とかガソリン、油がもれて道路に光ってるって意味じゃないかな」「水かれて、はいらないと思うな」「油染みの虹がうまいようでくどいというか」「メッチャ説明してくれた感じ。丁寧だなって」「道路に、って言ってるけどこれこそ滑走路にって言ったら面白いんじゃないかな。油の虹の滑走路、くらい言うと事故現場がバッと見えて。道路で車と車どうしがぶつかってガソリンかオイルがまかれた、そういう状況じゃないかと思います。あるいはラーメン屋が油捨てても虹っぽいのできるので、そういうのかもしれない」「そういう句、作ったな昔」
ふぐ刺にケチャップかける石油王/たろりずむ
(爆笑)「馬鹿らしくていい気もするな」「だまされてるな、日本人にだまされてる」「Are you OK? OK?って適当な英語遣って、相手も英語よくわかってないから」「味があんまりしないとか思ったんだろうね」「白身だからね。馬鹿みたいに明るくていいね」
あかぎれの指で押したる給油口/龍
「給油口ってのは運転先の左下か右下にあるんですよね。押すっていうより引くですけど」「車じゃなくてもあるじゃん、押し回しするようなのが」「ストーブとかもあるし」「じゃあ押す、の意味がないじゃん。開けたる、でいい。だとしてもあまり面白くないな。給油口とあかぎれの指がイメージが近い」「土方句ですなこれは」
石油王冬でも短パンアロハシャツ/翼
「石油王好きやな。まあイメージかな」「暖かいところの人のイメージが」
節分の豆に油が隠れたる/小川
「どういうことなんだろうなあ」「大豆とか搾れば油が出るってこと?」「わかんないです」
油風呂まーゆとならば耐へられる/翼
「まーゆちゃん可哀想だよ(笑)」「膝の上に乗っけてあげるの」「それでも熱い」
★おばあちゃんの天ぷら油からの火事/桃猫
(笑)「けっこう好きだな」「展開が面白いんじゃない。なにがあったんだと思わせる」「おばあちゃん、が効いてるんだよね。祖母のてんぷら油が火元、って言っちゃなんにも面白くない。からの火事、を下五に持ってきたのも絶妙ですね。言ってることは普通に見えて、最後どんでん返しが来る」「年寄りは馬鹿だから水かけちゃうんだよね」「絶対に水かけちゃいけないって言われてるんですよてんぷら油に火が着いたら」「すごい跳ね飛ぶから」「濡らしたタオルをかけるって言われてるのかな」
湯冷めして油汚れは明日にする/くちなわちゃん
「あー」「でも普通だな」「湯冷めと先送りの取り合わせはやっぱり普通なんですよね」「小堺一機のCMみたいだな。ライオンのCMの感じがする」「明日にする、って意思もいらないんだよな。湯冷めして油汚れは残りけり、のほうがまだいい。先送り、って言い方がくどいんだよね。短歌だったらこういう言い方でもいいのかな」「いやくどいでしょ」
おとな用肝油なんだか味噌っぽい/ぽっぽ
「肝油っていうのはサメの肝の油。あれ、たまに駅の売店にあるんだけど美味しくて1日で食べちゃう」「美味しくないよ。美味しくないものの代表だよ」「誰も共感せず(笑)」
雪しまき原油価格の文字赤く/小川
「個人経営のガソリンスタンドとかが手書きの文字で、原油価格の高騰のためお客様には大変ご不便をおかけしておりますみたいな文章書いてる感じ、田舎のほうの景色の感じがする。ガソリンスタンドに限らず飲食店ってこういう言い訳してるとこ多いんですよ。自分の店の値上げの原因を原油価格に転嫁してるっていうか。ラーメン屋の値上げの原因として、昨今の原油価格の高騰により300円値上げしますみたいな、そういう手書きの文字でもいい」「早くゼレンスキーが負けちゃえばいいのによ」
裏へ裏へと正月の油虫/翼
「正月の油虫、おもろいと思うなあ。裏へ裏へ、もなんかわかるんだけど」「裏へ裏へ、がよくわかんないな。人様が正月で楽しんでるから奥のほうへ入ってやろうっていう油虫の気遣いだとするならば面白いけどね」「揶揄っぽく思ったけど。正月やましい人が」
羽根衝きの油性で書いた肉の文字/小佐治
(笑)「これは面白い」「面白いか? あるあるじゃない」「小学生っぽいんだよな。発想がYouTuberっぽいんだよね。え、嘘でしょマジこれ油性なの、えー、っていう反応を撮ってショート動画で出す、羽根つきの落書きをマッキーで書いてみた、ってそういう動画っぽい」「いっぱいある世の中に」「焼き印で押す肉の文字」(笑)「男塾名物羽根つき」
闇鍋に回して入れるごま油/桃猫
「闇鍋に胡麻油入れる意味がないっすよね」「風味付け」「これで靴下美味しくなるよってグルグル回してる、意味わかんない」
三毛猫もうっかり油断ふゆの地震(ない)/惟久里
「これ不謹慎だろ(笑)」「猫っぽいって言えば猫っぽいけど」「三毛猫、は面白いって言えば面白いけどね。三毛猫がどうしたら面白いんだろう冬の地震に対して。うっかり油断、が言い過ぎなんだよね」「油断はうっかりするものだからな」「でもこの句でうっかり油断、がいちばん面白いからさ、残さなきゃダメだと思う」「自分で言っちゃうのか感があるよね。漫画っぽい感じがする」
買初に三割引きの油揚げ/遊鬼
「かいぞめ、初買いですね。有名なのは仙台初売り、すごいおまけとかつけたりする初売りがあるんですよ」「日記感ありますね、メモ感」「別にスーパーのチラシに○つけるだけでいいじゃん」(笑)
★穴がある給油タンクとじいちゃんと/ぽっぽ
「おー」「あー」「結核で切ってる人じゃない?」「給油タンクけっこうでかいよ」「これ、なんでじいちゃん出てきたの? 面白いって言えば面白い」「じいちゃん手術してるからどっかしら穴空いてるんだよ」「穴があるおじいちゃん、いいよね。給油タンクが合うかどうかだけど。じいちゃんに空いてるのは大賛成だよ」「赤い給油タンク、ガソリン入れたけどポタポタするんだね。あとおじいちゃんの余命っていう感じもするよね。末期がんなのにずっと酒飲んでる、そういう感じじゃない」
初門出醤油飲んでも熱が出ず/たろりずむ
「結婚したくない子がお見合いイヤで醤油飲んだんじゃない?」「初門出、新年の季語。新年に初めて家の外に出ること。醤油飲むってのは戦争行きたくないっていうってだけの話だと思うんだけど。でも熱が出なかった」
飾海老なたね油に入れちゃだめ/惟久里
(笑)「飾り海老って正月の飾り物で、生の海老を使う場合も」「餅の上にツンツンしてるヤツだよ。海老じゃないよ」「千葉のほうに本当の海老使うとこがあるんですよ。飾り海老だから食べないほうか」「水引きみたいなヤツじゃないの?」「海老の形の飾り物だそうです。基本的にゆで上げた伊勢海老で、本物の海老使う場合もあるそうです。作り物のほうが多いんじゃないかな今時は。この句のは食べれないほうだと思います。食べれないものを菜種油に入れちゃダメと。でも菜種油の意味がないんじゃないか」「別にサラダ油でもなに油でもいいからな」「なにか深い意味があるのかな菜種は」
初湯にて亜麻仁油に替える決意する/小佐治
「亜麻仁油高いんだよ」「健康にいいヤツ。体重計乗ったってこと?」「あーそういうことか。つまんねえなあ(笑)。正月太りって絶対するからね、体重の1割くらいみんな増えるでしょ」
油風呂学帽被る年男/企鵝
「そのまま男塾じゃん」「純粋に男塾のワンシーンですよ。『魁!!男塾』というジャンプに載ってた漫画」「学帽政が出てくるのは極道高校だからね、初期だよね」
※『私立極道(きわめみち)高校』は、『魁!!男塾』と同じ宮下あきらによる週刊少年ジャンプ初連載作品で、学帽政(がくぼうまさ)はその主人公。後の作品『激!!極虎一家』にも登場する。
慎重に醤油を垂らす節料理/翼
「(笑)これもまたレシピ句じゃん」「いや、これ節料理って言ってるから、食べる瞬間なんじゃないかなあ」「卵焼きとかだったらどうする?」「最近弁当タイプのおせちあるじゃん、それにパックの醤油がついてた、それをほかの材料にかからないように慎重に狙ってつけた、それを慎重に、って言ったんじゃないかな。あるいはおせちを作る段階で、ほかの芋煮とか栗きんとんにかからないように狙って垂らしたともとれるけど」「垂らす、は食べるときだよ、作るときじゃなくて」「だとしたらいい句な気がするんだよ。節料理、の言い方がつまんない気がするんだけどね。おせち料理にしか使わない一品を言ったほうがいい気もするけど」「重箱だからどこに垂らしてもいいんだよ」「でもけっこう味ついてるから節料理にお醤油を垂らすイメージがあんまりなくて」「おせち料理は食い積みっていうくらいだから、すぐ食べられるんだよね」「数の子とか」「ああ、数の子は後で醤油つけるかも」「酢だこに醤油とか」「田舎の人はなんにでも醤油垂らすんですよ」「それは慎重に、じゃない気がする」「ドバドバかける」「だとしたら、数の子に醤油狙つて垂らしたる、くらいでよかったんじゃないかな」「数の子の一粒狙う、くらいのほうが」「ああいいですねえ、狙う、は面白い。数の子ってあれ、一粒ずつが命じゃん。319分の1くらいの気持ちで狙って醤油をかける」「数の子の粒を狙って醤油差す」「ああいいですねえ」
なまはげがぺろつと舐めていく醤油/たろりずむ
(笑)「なんで? 一瞬うまいかなと思ったけど。でもなまはげが一品つまんでったってのは面白いね。醤油なめるんじゃなくてポテチでも適当につまんでいったら面白いね」「こっちも歓待しなきゃいけないような気もするし」「つまんでいつた○○かな、みたいな」「醤油、換えたらいいんじゃない?」「卵焼きくらいでいいんじゃない? 馬鹿らしくていいよね。色の取り合わせもいいよね」「なまはげってそういうことしそうだもんね、横暴だから」
御降りや油田の煙くろぐろと/ときこ
「御降り(おさがり)は正月の雨のこと」「どこの風景なの? 御降りと油田、合わないと思うけど」「油田は少なくとも日本にはないから。やっぱり御降りって言葉遣えるのは日本国内だけだと思いますよ。油田の煙、って言わなくていいんじゃないかなあ、石油、でよかったんじゃない」「石油の煙だったら川崎とかにあるから」「テレビの向こうでイランの油田設備に攻撃した、そういうのだったらわかるけど、この句は流石に時と場所が合わない気がしますね」「炭鉱とかだったらいい」
油壷辺りの匂ひ初電車/翼
「油壷ってなんだっけ」「地名です。神奈川県」「三浦半島。油壷マリンパーク(水族館)があった」「そうしたらけっこういいんじゃないかな。これ東京の人の感覚なんだけど、そっちに思い入れのある人じゃないと、あああの匂いねって記憶にピンと来ないから、わかるかどうかで言えば非常にニッチでわかりにくい句だと思いますね」「ちょっとレアってことでしょ」「この句を本当にいいと思える人は少ない」「その辺に住んでないとわかんないだろうなあ」「いい句な気がするんですけど、地元の挨拶句としては非常にいいと思いますよ。初電車、効いてるしなあ」「京急の南辺りの感じ」
※油壷には関東の私鉄、京急久里浜線の終点から京急バスで行ける。ヨットハーバーなどもあり、古くから観光地や別荘地として有名。
をぢさんに肝油をもらふお正月/たろりずむ
(爆笑)「つまんね~」「つまんなさがいいですね」「ただごとだ。サザエさんより平凡だ」「子どもとしては肝油もらってもなんにもうれしくないわけですね。だったら万札くれよって思っちゃう」「○○に○○もらふ、の定型感が素晴らしい。○○シリーズのいちばん下手な例」
ウッチャンナンチャンの油つぽい方お正月/翼
(笑)「あーナンチャンだね。でもちょうど紅白にポケットビスケッツとブラックビスケッツ両方出てましたから、今年は挨拶句って感じがしますね。油っぽいでナンチャンてわかるのまたいいですね」「うまいんじゃない」
取調べ室に油の匂いかな/光音座
「まあ普通かな」「てか、匂いしなくない?」「ポマードくさい昔のヤクザだよ。髪油だと思うけどね」「油、がゆるくない? もっと限定的な単語のほうが」「ポマードか松ヤニ油か」「ガソリンって言ったら面白いけどね。絶体絶命なのはあんたのほうだぜってヤクザが言いながら、刑事がなんだ!って火事になって、そういうドラマのワンシーン」「取調室にガソリン持ってけないよ」「仲間が外からガソリンバッてまいて火を着けて兄貴逃げろー!って」「それだったら取調室に残つてゐた石油、とか」「航空機事故で警察が介入してきたっていう話題からとってるのかな」
★正月の終はりこれでもかとラー油/翼
「おー」「ちょっと面白い」「なんか合ってる気もする。松過ぎて、とか松の内、とか言わないとこいいよね。男っぽい、雑な言い方と、これでもかと、が合ってる。仕事に意識を戻さなきゃいけないから」「飽きちゃったから味変して刺激求めるってのも」「グサッと刺さる句じゃないけどいい。句集に載ってそうだもんね」
太占祭油性マジックかさかさと/ゆり子
「太占(ふとまに)祭…牡鹿の背骨をあぶり、できた割れ目の位置でその年の農作物の豊凶を占う。昔の占いか。正月三日東京都青梅市御岳山で行う。えー!」「今でもやってる人いるんだ。縄文時代の話かと思った」「2ヶ所でやってる、確か」「ここから近い所ですね、知らなかった」「マジックどこに使うんだろう」「骨に書くんじゃないですか?」「骨には書かないだろう」「いや、本当は油性マジック出てこないと思うけど(笑)。私の宗教観の取り合わせなだけだよ」
冬日向に香りてきたる軽油かな/小川
「軽いけど、まあこんなのも。平均点ぐらいはある」
川崎ゆ油塗れの年賀状/翼
「ゆ、は『〜から』、の意味」「川崎市からやってきた年賀状が油まみれだったと。工業地帯への嫌味、ただそれだけですね」
二回戦は新年のおめでたい席題としました。
二回戦 「あ」で始まって「ん」で終わる句
(★=特選)
穴熊の鼻に刺さつてペプシ缶/小川
「おー?」「そこまで地中のものが見えるかってのが難しいとこだな」「ペプシ缶っていうのが穴熊の鼻に刺さってほしいものなのか。難しいなあ」
ああ岸田それでも自民の日本人/小佐治
「まあそうでしょうね。つまんねえな。それでも自民の、がつまんないんだろうな」「我慢の、のほうがいい」「いやそれもどうか。結局つまんないよ」「政治系のネタはやっぱり難しいんですよ」「言い尽くされてるからなあ。斬新さがない」「あくまでも自民の。まあ一緒だけどな」「パー券好きの日本人、でもなんでもいいや」
★兄嫁のスピリチュアルな栗金団/龍
(笑)「これはぶっ壊れてる。いいんじゃない」「どういうことなんだろう」「ノリだよ。深く考えちゃいけないこれは」「なんか緑とか色着いてたり」「スピリチュアルな栗きんとん、面白いかもね」「これは本当に面白さだけ」「水晶とか混ぜてたり」「パワーとかだと思うんだよ。EM菌とかそっち系の非科学的なところで、いやこれはメチャクチャ身体にいいんだっていう話をする、そんな感じ」「これ音だけでいいと思うけど。深く考えなくて。栗きんとん、って音が楽しいよ」
※EM菌は1994年から販売されている微生物資材。抗酸化物質を生み出すなど人間によい働きをするという触れ込みだが、開発者が電磁波障害の低減などの作用もあると語っていることからエセ科学だとする批判も多い。
頭にも枯葉を乗せてキリシタン/企鵝
「おーどう取る?」「島原の感じかな」「頭に葉っぱを乗せるってタヌキのイメージだけど。キリシタンって言い方が、五島のほうで迫害されていた隠れキリシタンのイメージなんだと思うんだけど、頭にも枯葉を乗せて、がわかんないんだよな。顔にも乗せて身体にも乗せてさらに頭にもってことかな」「隠れてるってことじゃ」「森の中にお侍さん、なんとかの守みたいな偉い人がやってくるわけですね。見つかると殺されるから山の中とか森の中とかに逃げて、枯葉をかぶって。隠れキリシタンを討伐するときのイメージだと。そう言っても普通だな」「髪型でわかっちゃうよザビエルみたいの」「それは宣教師だけですよ」
明日までにおせちを食べきらなあかん/ときこ
「まあおせちは残るものだから」
愛してると言つて冬館の強姦/遊鬼
(爆笑)「これいいね」「愛してるって言ったら和姦だろ」「冬館の強姦、言葉がいいなあ」「松本人志」「でもちょっとおしゃれじゃない? 結局和姦っぽいよね、納得してそうだもんね」「楽しんでるよね」
アレクサにプロポーズしたら「わかりません」/小佐治
「AIスピーカーですね。テレビつけてって言ったらテレビつけたり、会話ができるんですよ、わかんない日本語言うとわかりませんって」「アレクサの句でいいのあったね。『アレクサ 設定温度二度下げて/TV取材の時のカメラマン』」「アレクサ、で止めたのがいいんですよ。あの間がよかった。アレクサや、って言ったら超つまんない」
赤毛のアン暖炉の前も赤毛のアン/翼
「ん?」「どういうこと?」「難しいですね」「火に照らされてよけい赤く見えた」「最初であとんが出てきちゃって困ったなって思って」
天地の始まるところタクラマカン/小佐治
「仏教の発祥地ですからね。ゴータマが生まれた所」
アフリカの柚子湯を作る日本人/小川
「テレビ出てきそうですね」「惜しいけどね。アフリカの柚子湯、ってなんか面白そうだけど、最後を日本人にしなくても。柚子湯にアフリカ人入ってるっていいよね、柚子湯に浸すアフリカ人」「それは急に奴隷みたいな句になっちゃいますよ(笑)」「熱々の柚子湯に浸すアフリカ人」「面白いかもしれない」
あいうえお牡蠣に中りるれろわをん/翼
「え?」「みんな苦しいやん」「牡蠣にあたって舌が回らないくらいになっちゃった。ひらがなを縦に読んでったのかな」「あいうえお牡蠣に中りるれろかも、今イチだな」
アダルトな救援物資石川県/小佐治
(笑)「どういうこと? DMM?」「これであったまってくださいってバイブとか入ってる」「エロ本とかエロビデオとか」「また優先順位とか言われるよ」「性犯罪の抑止には適度にセックスのグッズとかサービスとかあったほうがいいんだろうけど、難しいとこですね」「政策判断が」
あんあんと炬燵が揺れるあんああん/桃猫
(爆笑)
アックスボンバー決める初春のハルク・ホーガン/小佐治
(一部笑)「いいね下らないけど。アックスボンバーはひじで当たる技」「初春、どう読む?」「しょしゅん、のほうが音が合う」「はつはる、のほうがハルク・ホーガンの当たるイメージがある。初春とハルク・ホーガンって好きだな、軽くていいよ」
ありがたう今年も大好きだよさつちやん/翼
「あー(笑)」
アイリッシュパブの大きな換気扇/小川
「お」「カッコいい。換気扇って天井で回ってるでっかい羽根でしょ」「換気扇じゃないです、あれはシーリングファン」「そのイメージのほうがカッコいい。シーリングファンがでかいっていいと思うけどなあ。ゆったりした時間が流れてる感じ」「難しいなあ。換気扇っていうと外気を取り込んで排気するためのものを指すから」「惜しいとこだよね」
アイドルになりたい新春のど自慢/桃猫
「なんか地方感と言うか」
鮟鱇の裏側みたいなお姉ちやん/たろりずむ
(笑)「裏側ってどういう感じ? 難しいな」「目がついてないほうでしょ」「お腹のベロっとした感じじゃないかな」「超デブってこと?」「ハリがない」「ブヨブヨしてる感じ」」「よくはないよね」
小豆粥炊けぬほど負けすっからかん/惟久里
「どういうこと?」「そんな言い方しないよ。負けたときの例えで小豆がゆ炊けないほど負けたよなんて」「相当すごいっすよね」「どんだけ悔しいかもわからない。負けの程度が一切想像できない」
暗号で開戦を知るカーディガン/遊鬼
「ニイタカヤマノボレ」「アメリカ軍は日本の奇襲のこと全部知ってたって言われてますけど」「「カーディガン、外したいよね」「難しいよね、暗号で開戦を知る、非常にいいんだけどカーディガンが」「サスペンダーも違うかな」「着てるものに目が行ったのはいいと思う。でもカーディガンは普通かな」「それこそアノラック、とかやると、完全に日露戦争ぽくなる」「アノラックいいけどカッコよ過ぎじゃない? そこまで行くと。もうちょっとダサいほうがいいんじゃない」「アノラックいいんじゃない。カーディガンだと弱さを出し過ぎててあざとい」「偏見なんだけど、暗号解読チームは変なヤツで映画でも描かれるんですよ、楽器が得意なヤツとか数学がすっげえできるヤツとかオタクのヤツとか。その中にカーディガンがいると。最近だと『ミッドウェー』って映画でも、暗号解読チームがヤバいヤツに描かれてる」
アシックス履いた走者に追いつけん/小佐治
「アシックス批判すか?」「ナイキ批判でしょう。ナイキのシューズが駅伝を席巻して超厚底シューズが一時流行って、9割くらいの学生がそれを履いてた時期があったんですよ。そこに対して、アシックス履いてるのにあいつ速いってそういう批判じゃないかなあ」「ウールスポーツ履いてたよ、川口能活と一緒の」
アーニャから分けてもらつたクリームパン/翼
「季節感がなんにもないね」「音はいいけどなあ」
新巻鮭といくらで作る親子丼/桃猫
(笑)「これこそレシピじゃねえかよ」
熱燗と私菊門と男根/遊鬼
(爆笑)「平松愛理みたいな感じする」「熱燗と私、菊門と男根、この対比はねえ」「悪くないけどねえ」「誰と誰が、関係がよくわからない」「菊門と男根がストレート過ぎるんだけどね」「私、のいる位置がわからない」「誰の菊門なのか」「錯乱してんじゃねえか」「私、が変なんだよ突然。どこに入り込んでるのか」「ひどいですね」「思いついたこと言っただけだろ」
※平松愛理は『部屋とYシャツと私』のヒット曲を持つ歌手。
あかねさす息子はむすめ野水仙/ぽっぽ
「あかねさす、は枕詞。日、昼、紫、君などにかかるって」「この場合はむすめ、にかかってるのかな」
アットランダムに並べてある蜜柑/ときこ
「ミカンじゃなくて他のものに替えたら面白くなるかも」
赤ちやんのタコが入つてゐたおでん/たろりずむ
「これはわかりますね。ただ、それ以上に特に面白さがないな」「よくできたって感じ」「言われてみればって感じですね」
熱々の焼き餅配るトルコ人/小佐治
(笑)「餅とトルコアイスを間違えたんじゃ。伸びる餅って書いて」
雨が雪に癌が再発するスパン/翼
「短い間隔」「つき過ぎな感じがする」「雪と病気ってけっこう近い気がするんだよね」
足早め仕事始めのルルパブロン/光音座
(笑)「サラリーマン川柳ぽいね」「風邪の始めに早めのパブロン、を分解して仕事始めをつけた」
アマゾンに追ひ抜かれた駅伝/翼
「Amazonに抜かれるって相当だぞ」「宅配業者に追い抜かれたってことですね。東京で買って小田原の家に駅伝より先に届いたって、そういうしゃれ」
ああそこそこおかしくなるまで布団/遊鬼
「ひどいよ」(笑)
アーケード街のイチオシ酢蓮根/ぽっぽ
(笑)「マニアックだなあ。巣鴨辺りかな」「まあそういうイメージでしょう。亀有とか下町のほうの感じしますね。焼き鳥1本50円で売ってる辺り」「酢蓮根、は渋いと思うな」
浅草観音の亡者送りじゃん/惟久里
「1月18日に亡者送りという宗教行事があるって」「お正月に帰ってきた人を元に戻すんじゃない」「江戸中期から始められた天下泰平・五穀豊穣を祈願する祭。松明を持つ2体の鬼が境内を巡り、地面に叩きつけた燃えかすを縁起物として持ち帰ることができます、だって。松明を持って人を追っかけてるのを聖火ランナーを見て思い浮かべた、違うかな」「惟久里さんから、じゃん、以外全部季語ですって」「浅草観音の亡者送り、で1つの季語。聖マリア処女懐胎の日、と一緒だよ」
アルコールランプで火事のお父さん/桃猫
(笑)「天ぷら油の句に負けるなあ。圧倒的に面白かった」
アナルから始めて新年は睾丸/遊鬼
(笑)「新年をなめてる」」「ひどい」
アーサー王修行時代の初写真/ぽっぽ
「またマニアックだね」「アーサー王…ブリトン人の君主、ローマンケルトのブリトン人を率いてサクソン人の侵攻を撃退した人物」「戦いが強い人だよ」「よくわかんないなあ」「なに時代だろ」「もちろん写真はないんだけど肖像画を描いたりするじゃないですか」
甘い物たくさん食べてまた検便/翼
(笑)「正月っぽいだろ」
諦めぬ尻尾 五日の救助犬/桃猫
「おっ。これは季語の一月五日ですね」「頑張ったけどな」「やっぱあざといかな」「入りはいいけどね」「あきらめぬしっぽ、ってのはもはやスローガンだよね」「中七以下で外したいな」「僕はこの感動を忘れないってクラウドファンディングとかやってる、そういうキャッチコピーとしていいんだよ」「五日の救助犬だけでそのニュアンス出るやん」「むしろあきらめぬしっぽ、を取っちゃう?」「でもそこが言いたいんだろうから、下でちょっと外すほうが」「諦めぬ尻尾遠目に五日過ぐ、くらいでよかったかも」「確かにあきらめぬしっぽ、だけじゃわかんない、救助犬まで言わないと。そこが難しい」
海女の背の窪みに匂うロクシタン/企鵝
(笑)「海女さんって60か70くらいのイメージなのかな」「そうでもない。意外と若いよ」「クリスマスプレゼントでロクシタンのクリームをもらって背中に塗ったっていうだけなのか、ハンドクリームが背中についちゃったのか、いろいろ取り方がある」
あかぎれを犬に舐められ即入院/たろりずむ
(爆笑)「馬鹿ですねえ。破傷風かなこれは。狂犬病の可能性もあるか」「狂犬病、人がかかると100%死ぬんでしょ。人間がなるとダメなんだよ」
※狂犬病は非遺伝性としては最も致死率が高い病気として、ギネスに載ってるそうです。
アップリケで名前を書いて捕鯨船/遊鬼
「可愛い(笑)」「アップリケ、もう言わなくなったねえ」
鮟鱇に見下ろされてゐるリアクション/小川
「見下されてゐる、じゃなくて?」「いや、わざわざろ、が入れてある」「吊るし切りのことかな。でも見下ろすほどの高さかな?」「見下されて、のほうがよかったかな」「むしろ逆で、俺よりも高圧的な吊るし切り、みたいな言い方をするとアンコウのほうが偉いとか、そういう逆転の現象が表現できるんじゃない。リアクションっていうとリアクション芸とか出川哲郎みたいのが出てきちゃうから」
アナと雪の尿道いやんばかん/翼
(笑)「ひどいよ」
明らかに死体を包んでゐた絨毯/たろりずむ
「おっ」「おー」「孤独死の感じ。溶けた感じがするけどね」「どこか短歌っぽい感じがするなあ」「まだ続く感じしちゃうね」「下の句がありそう」「チンポの跡がやたら大きい」(笑)
愛人とてっちり鍋の朝ごはん/桃猫
(笑)「政治家っぽいね。二階とかこんな感じじゃないの」「国会議員クラスになるとその日に帰るんですよね。まあリアルな感じなんだろうな」
あら節料理忘れたわさあ饂飩/惟久里
「なんだこれ(笑)。これ無理でしょう、あら、って」
尼寺の枯木の下のダットサン/企鵝
「ダットサンは日産の車でトラックみたいな感じかな。低い軽トラみたいな」「ピックアップトラック」「悪くないけど、ダットサンで通じないんじゃないかなあ」「廃車になって朽ちてる状態なんじゃないかな」「寺とかに古い軽トラとかあったりするからな。景色はわかる」「ダットサンがいいのか、これがカローラじゃダメなのか。でもダットサンってちょっと時代が古い感じがするんですよ、言葉の響きから。ダットサンの時代とか調べるとこれ合ってるかもしれないですね」「ちょっと知識がいるかな」
アーケードを歩く狐火とリボン/ときこ
「なんかいいじゃん。グリムっぽさはある」「狐火自体は歩かない。狐火っていうラッパーもいますけどね」「リボンがちょっと」「狐の嫁入りっていうか、そういうイメージは湧くけどね」「狐火は不思議な現象の火ですよね」
あり得ない富士山の雪盗るルパン/翼
「苦しいなあ」「ちょっと面白いんだけど」
熱燗を押し当ててくるお父ちゃん/たろりずむ
(爆笑)「ひどい」「可哀想だな」「実景だろたろさんの」「お父ちゃん、がいいな。お父さんじゃなくて。お好み焼き屋だよ『じゃりン子チエ』の」「本人は虐待だと一切思ってない」
※『じゃりン子チエ』は大阪の下町を舞台にした漫画・アニメ。博打とケンカばかりで仕事をしない父親テツに代わり、小学生の娘チエが店を切り盛りする。なお、チエの店はお好み焼き屋でなくホルモン焼き屋。
あちこちに賀正を貼つてカプセルイン/翼
「あちこちに賀正を貼るっていうのは?」「ポスター、正月の」「カプセルホテルにそういうのがあったって句か」「部屋ごとに貼ってあるじゃん」「カプセルの中まで賀正、とか言い方くらいがどうでしょう。しつこいくらい賀正、とか」
愛などは捨ててきました掛布団/翼
「臭いセリフになっちゃうね。昭和の任侠とロマンスの間くらいの映画で。言い切ったうまい感じはあるんだけど」「鶴田浩二に言わせたい」
※鶴田浩二は昭和を代表する俳優・歌手。任侠映画や戦争ものに数多く出演した。
味の濃き精液飲んで冬オリオン/遊鬼
(爆笑)「ひでえ」「合ってるって言えば合ってる。味の濃き精液、と冬オリオン、なんかイメージが合って。冬の白さとオリオンの力強さと味の濃き精液」「普通にいいなと思っちゃうよ」「変に捨てられないんだよねこの句は。でもダメですね」「うまいと思う。冬オリオン、は。動かない」「着地は決まりましたね」「途中までの技は最悪、着地だけは完璧」
暴れん坊将軍の来る養老院/翼
「ちょっとギャグに飛んじゃったんじゃないかな。暴れん坊将軍っていうのが、普段からカッカ怒ってるだけの会長って、そういう話じゃないかな。昔俺は悪だったんだぜって100歳くらいのおじいちゃんが言ってて、人を殺したことあるんだぜって。養老院、がつまんないかな」「最初は病院、にしてたけど病院よりは養老院がいいだろうと思って」
以上で終了です!!
最後までお読みいただきありがとうございました!!