零回戦の正解は 「スケート」。
昭和30年前後の句だそうです。
年イチの行事の発想が多かったのですが、「しばらくぶり」が合わない。 全員不正解。
今回は、りぼん句会にご参加頂いている遊鬼さんが働く横浜福富町のお店「ドングリ」を起点に、周辺を吟行。
一回戦 野毛・福富町吟行
(★=特選)
寒卵産んだあの子はナイスレディ/桃猫
「あー」「産んだ、って言うとスカトロになっちゃうからな」「この間、私が産んだんですって死んだ赤ん坊を警察に持ってって逮捕されたってニュースがありましたね」「病院にちゃんと行ってないで産んじゃったんですね。だから問題になった」「死体遺棄になるらしいです」「どうしても卵は浣腸プレイを思い出しちゃう。飲んだ、くらいがいい」
化粧乗り悪さうなやつばかりいさう/風の日の扉
(笑)「冬は乾燥しますから」「まあそうですねという感じ」「一息に読んだほうがいいな」
植え込みにハングルのメモ年用意/夢の二
「おー」「あー」「悪くないね」「ロマンチックですね。脱北者とか北朝鮮で大変な思いしてる人とか寂しさが伝わってくるけど、植え込みにハングルだと新大久保とか野毛辺りとかのコリアンタウンのイメージになっちゃうから。そうすると年用意が合ってるかどうかが問題になってきて、植え込みにハングルのメモがあったらそこにどんな事件性や暴力性、あるいはストーリーを感じさせるか。年用意って言っちゃうと逃げた感じがしますね。なにだったら面白いでしょう?」「討ち入り日」「赤穂浪士の討ち入り日はもっと事件性や暴力的になりますね。もうちょっと馬鹿明るいほうが、盆踊り、くらいでよかったんじゃないかな」
横丁の奥も横丁懐手/遊鬼
「あー」「奥、がいいかな、横、がいいかな。横町の横も横丁、のほうが」「それいいですね。メチャクチャ言いづらいんだけど」「そっちのほうがおしゃれな感じするなあ」「俳句として字面を考えると横横横って」「横丁って縦よりも横の並びの感じがする」「言ってることはわかる。まさに野毛の駅からマス目の感じが」「奥、にするか横、にするか先、にするかけっこう自分で考えたほうがいい気がするな」「隣、じゃ音が合わないな。脇、でもつまんないな。前、もありますよね」「奥、がベストな解ではないと思うんだ」「でもこれ、けっこう情景はわかるんですよね。ゴールデン街で50年飲んできたぜって自慢するようなおっさんのイヤな感じがして。でも俳句としてはいい感じがしますね」「奥、はよく知ってる人の言い方なんだよね。」「横、だと素人感も出てきますね」
顔見知り探して除夜の野毛小径/企鵝
「避けて、だよ。探さないほうがいい」「避けてのほうがリアルですね。会いたくないんだよ、昼間パチンコで5万くらい負けてイヤな顔してるとこ見られたくないとか、ソープ行って出てくるとこ見られたくないとか、いろんな見られたくないが年末にはある感じしますね。探すってのは明るい、ポップな感じしますね。対して避けてってのはネガティブな感じ」「春だったら探してもいいけど」「酉の市なんか探しちゃいますけどね、歌舞伎町で顔見知りいないかなって」
年の瀬の知り合いに遭う野毛の街/小佐治
「平々凡々な感じ」「知り合い、っていうのも半端な感じですよね」「考えたほうがいいよね、知り合い、を同級生だったりとか元彼女だったりとか、有名人かもしれないし。知り合い、を詰めたほうがいいなあ」「名字が思い出せない、くらいでもとかった気がするんだけどね。つんちゃんって呼んでたけど名前が思い出せないみたいな」「大家とかだと面白いよね、店主(たなぬし)に遭うとか。江戸俳句っぽいけど。人間関係が出たほうがいい、知り合いだけだと人間関係がわからない。そこが物語のツッコミどころ、勝負どころだからね」
日本語の通じぬコンビニ春を待つ/夢の二
「番号で行ってくださいマイルドセブンじゃわからないって」(笑)「日本語の通じぬ、まで言わないほうがいい気もするんだよな。日本語を二つ知つてる、くらいでいいんじゃない」
天麩羅の暖簾の大文字寒椿/遊鬼
「なんか見たことあるな。天麩羅の大文字、はダメ、明朝でもゴシックでもダメだと思うな」「手書き?」「ソープランドが手書きだったら面白いな」
焼牡蠣の煙の中のラブホテル/企鵝
「あー」「牡蠣と煙はいいけどな、牡蠣ってそんなに煙出ないからな。惜しいんだよね」「豚バラだったら煙上がるけど」「牡蠣の艶めかしい感じはラブホと合ってるんだけど」「牡蠣を食べるとチンポが強くなるってイメージが強くて、ラブホテル、が重いと思いますけどね」「そこまで普通の人は直結しないと思うけどね、いい距離感だと。貝類と女性器はつながりあるけど」「これ焼き鳥の煙じゃいけないんですか?」「焼き鳥じゃ面白くないよ。焼き牡蠣の看板裏のラブホテル」「看板に牡蠣とは書くけど焼き牡蠣とは書かないですよ」「のぼり?」「幟だったら生牡蠣でしょう」「和食のイメージになっちゃう。白人のセックスにしたいんだよね」「岩牡蠣の幟の裏の、だったらいいと思いますけどね」「水戸だからそれ。納豆くさい女だ」(笑)
客一人店員三人冬の星/遊鬼
(笑)「ぼったくりバーだよ(笑)」「これ笑えるけどなあ」「冬の星、ちょっと逃げた感じしますけどね。店員が三倍いて、とかでもいいと思う。客一人、って言うと流石にぼったくりバー確定し過ぎちゃうから」「客を自分にしなきゃいけないんだよ。店員三人に一人や、って言うと客って言わなくても客だってわかるから。客一人、って言うと外から見てる感じになっちゃうから」「俺一人?」「それはそれでカッコつけ過ぎな感じが」「店員が三人の店、って言えば、客一人っていうのは言わずもがなだし」
餅配るソープランドに事務所から/小佐治
「語順悪いんじゃないかな。事務所からソープランドに餅配る、でしょ」「ソープ経由、にしたほうがいいよ」
小晦日煮込に七味溢れさせ/翼
「こつごもりって?」「12月30日」「ホトトギスだったら満点だな」「溢れさせ、皿の外に七味がこぼれてるんですよね、それを詠んだのか。挨拶句なのかな」
野毛の冬NHKで見たラブホ/小佐治
(笑)「ちょっと面白いかもしれない。NHKで見たラブホ、新しいですね」「殺人事件がありましたとか」「上五は動かしてもいいのにな。冬の星、とか、これこそ雑な季語がいいと思う。下がかなり具体的なんで、上はざっくりでいいと思う」「けっこういい句だと思う。ツイッターでバズりそうな感じがするしなあ」
サングラス越しの眼(まなこ)や冬酒場/小川
「季節感が崩壊してますね」(笑)「ホトトギスの人は怒ると思う。季語警察が動くぞ」「サングラス年中つける人もいるので。多くの人は夏につけるんですけど、タモリみたいな目を見せられない人がサングラスを」「まなことサングラスはテンションが合わないかな」「色付きレンズとか言っとけば、サングラスって言葉遣わずに」「冬のサングラスはなかなか難しいよ」
年の瀬の月の重さがネオンまで/翼
「ちょっといいんじゃない? 年の瀬に月が見えてるんだ、それが大きくてボンヤリしててまさに今にも落ちてきそうでソープランドのでっかいネオンにぶつかろうとしている、落っこちてつぶそうとしている、そんな感じかな」「年の瀬と月が重いって要素が多い」「「抽象に逃げてる感じがする」「重さ、と暗さ、どっちがいいかな。重さのほうがリアリティあるかな」「暗さのほうが景っぽいかな」「絶妙と取るのかダサいと取るのかわかんねえ。響きはいい。でも重さ、が心に残んないと思います」「馬鹿さ、くらいのほうが」「それだったらわかりますね」「ネオンの馬鹿馬鹿しさ」
冬ざれてトイレで叫び出だしたる/小川
(笑)「いないよそんなヤツ」「冬ざれを馬鹿にしてる」
とろろ汁全部溢してしまひけり/風の日の扉
(爆笑)「どこで見てきたんだよ」「何をどこで見たのか」「ナイスレディって店の名前だけで妄想してる」「違うチャンネル見てんじゃないか」
50分コースの白字年流る/企鵝
「あー」「これ面白いんじゃないかな」「新しいって言えば新しいけどパターンがあるんだよな」「既視感ありますか」「月極駐車場でもいいし」「月流るですよ。50分ていう中途半端な時間を別に50分間で年をまたぐわけじゃないんだけど、この年末の貴重な時間にわざわざソープランドに行くというその馬鹿馬鹿しさを詠んでると思うと、この句けっこう重いというか自分を笑ってると思うんですよ」「ソープランドに入ってないんだよ」「あー外から見てるのか」「そこがつまんない」「なるほど。看板を外から見てる感じでつまんないと」「漫画喫茶ゲラゲラ二十四時間営業中/石丸元章と同じで、見たままなんだよ。ゲラゲラの句まで行けば面白いけど」「財布が軽くなるとかスッキリするとか、行ってきた感じがしないもんなあ」「これはやっぱり、僻地を歩く限りは当事者になんないとね。傍から見ちゃうとね」「動物園を見てる人の句になっちゃうんですね」「乞食の目線で見ないと、床で。地上2cmから見ないと」
ピンサロの待ち合はせする年の暮/遊鬼
「の、がダメでしょうね」「ピンサロで、かな」「どっちにしてもダメでしょう。ピンサロの面接を受く、だったらいい」
どこの国の言葉か知らず年詰まる/小佐治
「年詰まる、がダメだなあ。もっと軽い季語にしたほうがいいと思うなあ。白鳥食ふ、くらいの。動かないものがいいな。枇杷の花とかにすると田舎っぽくていいね。渋いつまんない花出したほうがいい」「確かに謎の国の言葉喋ってる人がいたんですよ。あと、明らかに日本語なんだけどフィリピンやベトナム訛りの人も」「それをアレンジして、雪柳とか入れるといい。実南天とかいいと思うなあ」
燗酒は若い女を肯はず/翼
「うべなわずって?」「肯定せずってこと」「肯(がえ)んぜず」「説教くさいんじゃない?」「ダサい」「おっさんのドヤ顔が想像できるんだよね。これカッコいいだろ?っていう、そんな匂いを感じるんだよ。確かに字面はカッコいいけど」「野毛代表の気持ちでございます」「学はある感じはするんだけど」
ラブホ街ときどきカジノ冬の月/桃猫
「火事はダメだ、俺のキャバクラに勝てないと思うよ」「カジノ、です。言い方がつまんないかな」「並列でつなげたほうがいいと思う。モーテルとポーカーカジノ冬の月、とかそれくらいサラッとやったほうが。モーテルだと野毛の感じが出る。ラブホだと新横浜の景だと思うな」「モーテルって死語ですけどね。ほかに言い方いっぱいあるんですよ、ファッションホテルとかほかに2~3個」「逆さクラゲ」「連れ込み宿なんて昔は言ってました」「モーテルって言うと車で入るホテルのイメージなんだけど、日本でも一時モーテルって言ってた」「向こうは家族用ホテルなんだよね」
着膨れてビルの隙間に立小便/風の日の扉
「これは軽くていいと思うよ。直しようがないけど」「直しようがないけど取りようがないんですよ」「2万句作ったら1句くらいあってもいい」「2万分の1(笑)」「ときこさんの、着ぶくれて西川君の鼻ピアス、すげえ心に残ってるんだよなあ。意味わかんないけど」
帰る家また間違えて咳払い/桃猫
「間違えないよ」「また、とかだけ、とか気をつけたほうがいいよ、僕は好きだけど。だけ、とかのみ、を遣い過ぎだって怒られたことある。この辺はかなり考えたほうがいいんじゃないかなあ。詩っぽくなっちゃって安易な俳句の作り方になる」
ベトナムに英国コリアも野毛にある/小佐治
「これはも、が変。全部並列にしなきゃいけないんで」「全部漢字で並べちゃえばいいじゃん。ベトナムは越国だっけ?」「ベトナムと大英帝国と野毛と」
とりあへずショーパブもある冬の街/翼
「けっこういいんじゃないか。とりあえずある、っていう雑さなんだけど意味もなく、なんでこんなとこにショーパブあるの?っていう。それを冬の街、の過疎り感が」「必ず、のほうがよくない?」「いや、とりあえずある、っていうその雑さが面白いんだよ」
年の暮れバルの隣のラブホテル/小佐治
「超違うだろ、今の句とこんな下手くそな句と」「ちょっとガクッとしました」
年の瀬や野毛から見える観覧車/桃猫
「俺の句だと思った、俺も観覧車で作ったよ」
夜明けでも運ぶシャンパン星冴ゆる/翼
「上五が最悪ですね。日本語を覚えてない人、フィリピン語以下の句。タガログ語俳句ですよ」「逆に名誉のような気もしたけど」「0点もつけられない、ペンがもったいない」
母音四つであけまておめめたうこさいまず/翼
(笑)「これこそタガログ語じゃないの」「母音が足りないって言ってたよ誰か」
呼び込みの厚底ブーツ冬の月/企鵝
「これは普通過ぎますね」「これはNHKのニュースしか見てない、常識のないおばあさん」「並選にもならないですね」「厚底ブーツを面白いと思っちゃダメなんだよな。気持ちはわかるけど老人の発想なんだ。新しさってのはそういうとこじゃない。それよりも指の間にゴミが入ってたりとかくるぶしが変形してたりとかリウマチだったりとか」「解像度上げるってことですね」「本人の哀しみを描かないと。他人事で新しいこと詠むとしらけちゃうんだよ」
息白し音声チェックせるおじさん/風の日の扉
(笑)「なんか面白いけどね」「せる、がいいね」
★煤逃げのおっぱいパブのあたたかさ/桃猫
「あー」「これいいんじゃない。これがリアルなんだよ」「煤逃げって?」「煤払いをサボること。大掃除をサボって逃げちゃうこと」「ちゃんと当事者になってていい。そんなに大した句じゃないけど理屈としては合ってる」「あたたかし、のほうが馬鹿っぽい」「どっちでもいい。好みの問題だよ」
スナックの外に聞える小晦日/龍
「なにが聞こえるんだろう」「音が漏れてるってことかな」「外に、が弱いよね。外に、か外へ、か助詞を考えたほうがいい」
欄干に尻の冷たき都橋/企鵝
「おっ」「あそこは腰掛けないから」「そこがリアルとの差かな。でも待ち合わせ場所っていうから」「あれは俺の待ち合わせ場所だから。一般人は待ち合わせしないから」「これはしょうがない。画面から見てどういう場所かってわからなかったでしょうから」「もっとメジャーなとこにしたほうがいいんじゃない?」「心斎橋とか」「渡月橋とかあっちのほうが、冷たさの感じが出る。季節を秋寄りにして渡月橋だったら合うと思うな」
風船のおじさんもピンクのおじさんも/桃猫
(笑)「挨拶句ですね」「悪くないと思うよ」
松飾地主のほうに少し向け/龍
「古過ぎる、こんなの地頭天皇の頃だよ」(笑)「庄屋とか大名とか君主とかそんな感じ。地主っていうか事務所、じゃないですか。でも事務所はやり過ぎかなあ」「下げ、って言ったほうが面白いよ」「向け、って言うと忠誠心があるっていうか社畜俳句みたい」「ロシアの俳句だよ」「共産俳句じゃねえかよ」
着ぶくれて鳥居の裏の闇カジノ/企鵝
「いいんじゃないかな。道具立てとしてはいいと思うな。直しようがないし。僕は好き。その辺のおばさんたちは取れないだろうけど、過不足ないじゃない。裏、と闇、が近いのはなにか言われるだろうけど」「小っちゃな神社があって、その裏に」「鳥居の隅、がいいかもしれないけど、そこまでやらなくてもいい」「着ぶくれて、と悴んで、どっちがいいかな」「着ぶくれて、だと勝ってる感じがするんだよね。悴んでると負けてる感じがしますね」「それは好みだよ」「バカラで300万負けた人の句なのか、ポーカーで15万くらい買った人の句なのか」「それは季語で全部わかっちゃう。自分で実験すればいいんだよ」「どっちが句としていいんだろうなあ」「時間の経過としては着ぶくれが先ですから。同じ内容なんだけど悴むを先に持ってきてカイジ感を出すか、自分で考えたほうがいいと思う。どっちが正解ってことじゃなくて季語で内容が変わるって、そういう意味で舞台立てできてるんで、季語で遊ぶってこと覚えると物語が変わってくるね。いい例だね季語で変わってくることの」
※カイジ…漫画『賭博黙示録カイジ』『賭博堕天録カイジ』などのシリーズ。主人公カイジが命まで賭けた様々なギャンブルにチャレンジする。アニメ化、実写映画化もされた。
ホテルリバーサイド大岡川に尿/翼
「しと、ですか? にょう、って読みますか?」「しとだよ」「でもしとっていうとシト襲来みたいな感じがしちゃうからなあ、にょうって言ったほうがいいのかなあ。でもにょうって読むのもなあ」
年忘れ野毛の出汁割り出しまくり/小佐治
「也屁の宣伝じゃないか」(笑)
※「ドングリ」のすぐ近く、りぼん句会になじみのある也屁さんが経営するたこ焼き屋「濱ゑ美寿」の名物ドリンク「出しまくり出汁割り」を、当日いただきました。
冬寂し酔はずに野毛を通り抜け/翼
「あー」「グッとくるけど、演歌みたいなできちゃった感が逆に気持ち悪いんだよなあ」「いいんじゃないすかそういうのも」「安心感があり過ぎるんだよね。水戸黄門みたいな最初から最後まで安心できるドラマを見てる感じかな。本当にもうできあがってる安心感、受け入れなきゃいけないのかこれを」「この会でこういうの出るってのが大事なんだよ」「野毛のPR俳句に出したら間違いなく特選なんだけど」「愛があるだろこれ」「うまいですね、でもうまいと心に残るはやっぱ違うんだよなあ」
小晦(こつごもり)電話ひとつで届く酒/桃猫
「季語がダメですね、季語が理屈になっちゃってる。雪女、とかにすればいい、変な季語持ってきたなあって感じのほうがいい。闇鍋、だと庶民的になるし」「小つごもり、つまんないですね」「なんでもできるのに」「師走とか年の瀬とか大晦日とか言っちゃうとつまんないですよね」「イヨマンテ、とかよくわかんないのつけたほうがいい。高知なら鯨の日、とか。そんな日ないんだけどダイナミックな日にしちゃえばいい」
組事務所避けて帰らう冬の月/風の日の扉
(笑)「月がとっても青いから遠回りして帰ろ♪ってそういう理由だったのか」「当たり前っていうか」
嚏する恋愛酒場さくらんで/遊鬼
「さくらんという恋愛酒場があった」「ダメだなつまんねえな。そこを我慢しなきゃって言ってんの。くさめとか嫌悪感出しちゃいけないんだよ、グッとこらえてなんでもないもんを出すと嫌味になるんだよ、蝋梅とか」
東京の替え歌を背に年暮れる/小佐治
「東京の替え歌、ってなんだろうなあ」「替え歌がピンと来ないなあ」「東京にはもう何度も行きましたね~♪っていうのを、野毛には~♪って歌ってたんですよ」「音が合わな過ぎるよ」
悴んでキムチに悪口言ふて食ふ/翼
「言ふて、も食ふ、も両方いらないだろ。悪態ついてゐる、くらいでよかったんじゃ? でもそうしたらキムチがただの韓国人の比喩になって揶揄してることになるからダメだな。こんなもん食べてるから馬鹿になるんだよって言って食ってるその馬鹿さ加減がいいんだけど。言ふて食ふ、はどっちにしてもつまんないなあ」「コリア大好きだから」
みやこ橋はりまや橋よりいい感じ/桃猫
(笑)「馬鹿ですね、発想が馬鹿でいい」「日本3大ガッカリ名所の一つ」
知らされぬ我が生誕や冬の野毛/翼
「お?」「知らされぬ生誕って?」「出生の謎、父親の顔とか」「そんな仰々しい。野毛、が支え切れてないような気がする」「難しいね。実は育てのお父さんとは別に本当のお父さんがいるっていうみたいなストーリーがあったのか。あったという前提がなければいけないんだけど、あなたの本当のお父さんは有名な政治家なのよとかそういうことだと思うんだけど、生誕や、が気になるなあ」
カラオケの音程ズレてゐる寒夜/風の日の扉
「冗長過ぎるなあ。音程ズレてゐる、に9音使う神経がダメだな。音痴、って言えば3音ですからね。音程ズレるって言い方は相当トロいかもしれない」
★冬帽子眠れる留守番のおじさん/風の日の扉
(笑)「あー、これいいよね」「孤独死だよ」「冬帽子、がいい」「眠れる、も合ってるよね。眠つてゐる、じゃ面白くなくて」「冬帽子、が相当うまいよ」「絵がすごく浮かんでくる」「安定感がある、すごいピタッと来た」
カタカナで書くヨコハマや冬薔薇/翼
「冬薔薇が」「伊集院静っぽいか」「馬鹿に行くんなら馬鹿に突き抜けなきゃいけない」「カッコつけちゃってる。ゴチャゴチャしてる感じがする」「カタカナで書くヨコハマ、にどういうイメージを持つかだよね。バブルの感じとか」「ヨコハマローズってことですよ、ただ単に」「ヨコハマローズって?」「そこにあったじゃん、バーで」
巨大なるラブホの裏のおでん酒/遊鬼
「なるほど。巨大な、を先に詠んだんだ」
芥場のポインセチアだつたもの/夢の二
「ゴミ捨て場か」「だったもの、か。難しいなあ」「中身がなさ過ぎる。目立ったほうがいいなあ。芥場にポインセチア目立つもの、ってして立たせて希望を持たせたほうがいいと思うな」「明らかにもらったばっかのポインセチアが捨ててあるってことなら面白いかもしれない」「芥場にポインセチアのままのもの」「いいですねえ。太客のキモい男に贈られたものだからすぐ捨てた感じがしますね」
冬深し事故も事件も風化して/翼
「これはついてるんじゃないの、深し、と。ザ・諸行無常みたいな」「冬深し、がいいのか木枯らしとかじゃダメなのか。いいんだけど、この合い方80点レベルの気がするんだよ、もっと100点に近づけられる気がしてむずがゆいんだよ」「木枯らしは風の字があるからやめたんだよ。木の葉散る、くらい言っとくか」「冬木立、もやり過ぎかなあ」「松納め」「ああ、いいかも。ネットって風化するじゃないですか人も事件も。誰も今汚染水の話しないし、そのうち松本人志の話も1ヶ月くらいで誰もしなくなるでしょう。人の噂も七十五日。そう考えると松納め、いいかも」
安全に遊べる雀荘返り花/夢の二
(笑)「返り花、意味が強い気がするけど」「返り花でなにを言いたいのか」「安全に遊べる雀荘、って難しいよね。隣に書いてあったけど。雀荘に入んないとダメですよね、当事者目線でないといけない。高めのレートのとこだと逆に静かだったりするんだよね、馬鹿がいないから。で、ポインセチアがそうっと置いてあったりする。そういうとこを詠んだほうがいいと思います」「安全と言はれし雀荘、過去形にするとなにがあったんだろうってことになる」「なるほど、面白いですね」
路地裏の後れて撤去する聖樹/夢の二
「言ってることはわかるかな」「作った感じがするなあ」
子ども連れ通れる道もある寒夜/小佐治
「そりゃあるだろうどこでも。子ども連れ、弱いな」
モツ焼に挟まれてゐる白い息/翼
「サイズが」「はさまれるっていうのが道の右側と左側なのか」「店内のほうがいいね」「外の左側のテーブルも右側のテーブルもモツ焼きを注文してはさまれている、だったら面白い」
お年玉全部合わせて御入浴/龍
(笑)「今小学生ってどれくらいもらうんですかね」「年齢×1000円だよ」
煙草捨てまたすぐ元の懐手/翼
「なんかわかるけどなあ」「また、はいらないんじゃないかなあ。すぐ、もいらないかなあ」「すぐまた元の、っていうのは日本語的には正しい。英語の形容詞の順番って難しいんだよ」
一見は入れない店頬被り/遊鬼
「頬かむりって銀行強盗じゃん(笑)。でも頬かむりがないとこのしゃれがわからなくなっちゃうんで。これは落としどころとしてはうまくいってるかなあ。微妙なとこだな。頬かむりがなきゃまったくつまんない」「俳句としては微妙なところかと。面白いけど高度ですよ。一見さんお断りだからかぶってきたよってしゃれなんですよね」「頬被りなら俺の好きな川柳で、頬かむりてめえ松方弘樹だな/渡辺隆夫」
呼び込みが消ゑて凍てたる観覧車/翼
「同じ観覧車の句作ったって言ったじゃん」「全然違うじゃないですか。桃猫さんのは観覧車が見えたってだけで」
立ちんぼに自己紹介して水つ洟/遊鬼
「するか馬鹿」(笑)
二回戦は店名「ドングリ」から。時間の関係で一人一句。
二回戦 「ドン」の音(一人一句)
(★=特選)
蕎麦アレルギー力うどんをおかわりす/龍
(笑)「考えるのが面倒くさい、そういうの。この句に対して考えるのが面倒くさい」(笑)「セックスが下手な人の句だと思うね、この遠回りな感じが」
ドンペリの値段で決める返り花/夢の二
「これは逆に銘柄を言っちゃいけない、シャンパン、にしないと。ドンペリの値段は一緒ですから」
鈍感な性器もありて歳の市/遊鬼
(笑)「馬鹿じゃないの」「売ってねえよそんなの馬鹿」「鈍感な性器もありて、面白いですけどね」「昔は芋茎(ずいき)とかあったけど」
フェラチオがどんどん上手く掘炬燵/桃猫
(爆笑)「ダメだこりゃ」「これ放送してるんだからな。補助金もらえなくなるから今すぐ放送切れ」「元から上手く、のほうがいいよ」
★どん兵衛を片手にツモる年の暮/企鵝
「これいいね。家族麻雀。うまい」「この短時間でよく出しましたね」
冬の虹キーパーも蹴るサドンデス/小佐治
「面倒くさいよ」「これくらい理解しましょうよ」「セックスが下手なヤツの句」(笑)「Vゴール方式の頃のJリーグですね」
ドンファンに憧れている年忘れ/小川
「本当にみんなセックスが下手だな」「紀州のドンファンだろ」
初日の出訝し愚鈍なるフェミスト/翼
「ニ、が抜けてますよ」「大したことねえな」
以上で終了です。
2023年も大変お世話になりました。
無事毎週句会をやることができました。
明けて2024年もよろしくお願いいたします。
1月13日(土)は「短歌と俳句 念力りぼん」。参加者募集中。
こちらもよろしくお願いいたします。